古賀茂明「玄海原発再稼働は危ない」これだけの理由
2015.02.13
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激白100分
安全神話のウソ
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「"買収"するにも限界がある。数があれば、自民のカネの力に抵抗できます。佐賀の山口知事が脱原発のシンボルとなって共闘を呼びかければ、大きなインパクトになる」(古賀氏)
「地盤が頑強なことで有名なフィンランドの南部オルキルオトで現在(いま)、世界最大手の原発企業・アレバ社が原発を建設していますが、安全対策のために費用が嵩(かさ)み、1兆円を超えた。いつ完成するのかメドも立っていません。ところが地震大国・日本で造っている大間原発(青森)の建設費は、ほぼ半額の6000億円程度。安倍総理の『世界一安全基準が厳しい』という言葉が真実なら、考えられない数字です」
 安全対策工事を削減するなどしないと、ありえない数字――改革派官僚として活躍した元経済産業省職員の古賀茂明氏は「日本では"安全のダンピング"が行われている」と表現した。
 たった一度の事故でほとんど倒産状態に追い込まれた東京電力を見れば、原発がペイしないことは明らか。「それでも先進国で唯一、原発にこだわっているのが日本です」と古賀氏は言う。事実、九州電力の川内(せんだい)原発(鹿児島)に続き、関西電力の高浜原発(福井)も原子力規制委員会の安全審査をクリア。再稼働に向けて動き出している。
「おそらく今後、事故の際の損害賠償額に上限を設ける法律が出て来るでしょう……」(古賀氏)
 だが、希望はある――先に行われた佐賀県知事選では、原発推進やオスプレイ受け入れ(佐賀空港軍港化)などを掲げる自公推薦の樋渡(ひわたし)啓祐前武雄市長が敗北。無名に等しかった元総務省の山口祥義(よしのり)知事はなぜ、TSUTAYA図書館で有名な"改革派市長"に勝てたのか。古賀氏は「脱原発派の上積みがあった」と分析する。
「東京に本社がある大新聞(全国紙)は『勝因は農協改革反対票が山口氏に入ったから』と書いていましたが、僕はそうは思わない。樋渡氏が"怖いリーダー"安倍総理と重なったのだと思います。『安倍首相と樋渡知事の"行け行けドンドン"コンビが誕生したら、佐賀はとんでもないことになる』という恐怖感、嫌悪感が県民にあった。だから、当初予想ではダブルスコアで楽勝のはずだった樋渡氏は短期間で逆転されたうえ、なおかつ約4万票もの差をつけられたのではないか」

シェルターに入れない!

 山口知事は1月29日、九州電力「玄海原発」(佐賀)が目の前に迫る離島を訪問。避難用シェルターを視察し、車座集会では再稼働反対を訴える島民の声に耳を傾けた。
「原発容認に舵を切るのであれば、何だかんだと理由をつけて離島には行かない。視察に行けば、避難計画のいい加減さが明らかになり、原発反対の声も出ますからね。山口知事はそれが報道されることを計算したうえで、視察したのでしょう」
 実際、山口知事の視察は「離島3島視察 住民、原発事故への不安訴え」(1月30日付の佐賀新聞)などと報道され、避難用シェルターに島民の約半数しか入れないという、とんでもない不備を目の当たりにする。
「前から言っているのですが、原発本体の安全性の議論は技術的な話になりがち。一般市民には理解しづらい。これが避難計画だと『島民の半分はシェルターに入れないのか!』と非常にわかりやすい。米国の場合、原発の近くの住民が安全に逃げられる対策をとらない限り、原発建設は認められません。ニューヨーク州ロングアイランドの原発は島民の安全な避難方法が提示できず、結局、廃炉が決まりました」
 玄海原発の場合、シェルター以外にも致命的な問題点が指摘されている。去年11月に避難訓練が実施された北陸電力の志賀原発(石川)の例は大いに参考になるだろう。
「計画では住民は船で避難することになっていたのですが、なんと天候が悪くて出港できなかった。避難計画が役に立たなかったわけで、本来なら全国紙が1面トップで報じるべき大問題ですが、扱いは小さかった。それでも地元紙が記事にしたので、地域住民には伝わった。これが大事なんです。再稼働反対の世論が盛り上がれば、知事に対するプレッシャーになる。新潟県の泉田裕彦知事と話したとき、彼はこう言っていました。『原発を動かせという圧力は強い。だが、県民世論は全体として原発反対。だから頑張れるんだ』と」
 古賀氏は「安倍総理には東京のメディアは抑えたという自信がある」と見ている。だが、地方は違う。全国紙がスルーしても、地方紙は原発の問題を取り上げる。県民世論が盛り上がり、再稼働を推進する自民系の候補が負ける。
 もちろん、安倍政権も黙ってはいない。
 沖縄知事選後、翁長(おなが)雄志知事が上京し、安倍首相や菅官房長官に就任挨拶のための面会を求めるも拒否された。約3800億円と見積もられていた沖縄振興予算は500億円近く減額された。
「中央に従わないとこうなるぞ、という見せしめですよ。石原伸晃元環境相は『最後は金目でしょう』と言いましたが、これこそ自民党の基本哲学です。玄海原発を再稼働すれば、原発マネーが入ってくる。しかし事故が起きれば、逃げることさえできない人が多数出る。たとえ放射能が少し漏れただけでも風評被害で地元の農産物や海産物が売れなくなる。そんなリスクを本当に背負いたいですか?」
PHOTO:取材・文/横田 一 撮影/村上庄吾
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