この会社の仕事と居心地 ヘーキン君の「弊社案内」第33回 山本化学工業株式会社
2015.05.19
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大阪発"下町ロケット水着"を作った男たち
’08年の北京五輪・水泳競技と、’09年のローマ世界水泳で世界記録ラッシュの立て役者となった水着「レーザーレーサー」。それに勝るとも劣らない結果を残した日本製水着「たこ焼きラバー」をご存知だろうか。両大会後程なくラバー素材の水着着用は禁止されたが、山本化学工業は6年をかけて新たな水着素材を開発。今回は、その責任者二人が登場です。
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右 執行役員 海外・医療機器統括責任役員
松岡勇人(44)
左 常務執行役員 役員統括
森本雅彦(45)
――なぜ水着素材を開発しようと?
森本「元々、我々はクロロプレンラバーというゴムを扱う会社で、マリンスポーツやトライアスロンのウェットスーツ素材の製造がメインなんです。特に、トライアスロンではウチのスーツだといい記録が出ると好評をいただいていました。ところが、’04年アテネ五輪のトライアスロンでウェットスーツの着用が禁止されてしまい、選手たちから『記録の出る水着を作ってほしい』という要望が上がってきたんです。  そこで、ウェットスーツの技術を活かしてラバー素材の水着を作ったのが始まりでした。その後のレギュレーション変更で、インドアの競泳でもラバー素材が使えるようになって『たこ焼きラバー』と呼ばれる水着を開発したんですが、結局使用禁止になったため、繊維素材を加工して新しい水着を作ろうということになったんです」
――新開発した水着の特徴は?
森本「これまでの水着は撥水性の素材が主流だったんですが、当社の新素材は"親水性"なのが大きな特徴です。当社の社長が、鯛の身体を触った時に『ヌルッとしていた』ことにヒントを得て、水中で暮らす生物に近づけていくのが最も理にかなっているのではないかというのが、そもそもの着眼点でした」
――開発・生産にあたっての苦労は?
森本「繊維に親水性の加工をする工程です。開発開始から6年になりますが、その半分の3年以上は加工の試行錯誤に費やしました」
松岡「生産管理の面から言うと、これまで当社は薄い繊維素材をあまり扱ってこなかったため、苦労しています。加工の機械に素材を通す際に作業員を増員しなければならなかったり、素材投入の際に細心の注意を払わなければいけなかったり。ある工程では、どうしても専門性の高い外部の工場にお願いをしなければならないということもあります。私自身も、外部工場の機械のスケジュールが取れずに締め切りに追われ、てんてこまいしました。現場では了解をもらえても、そのラインを動かすには工場全体を動かさなければならず、都合がつかないことも多々ありました。そんな時は追加料金を払う交渉をしても効果がなく、必死にお願いし続けるしかなかったです」
森本「試作と量産では加工に使う機械や製造工程が変わってくるので、品質を一定にするには別の苦労がありますね」
――新型水着の効果は?
森本「親水性の高い素材にした結果、従来の水着に比べて水の抵抗が85分の1まで減少しました。水着と肌との抵抗も従来の7分の1以下に下がっていて、筋肉の自然な動きを妨げないことにも繋がるはず。魚にも様々な形の違いがありますから、我々は過度な締め付けは不要と考えています。リオ五輪では、この水着で好記録をバンバン出してほしいですね」
――普段はどんなお仕事を?
松岡「私は主に海外への輸出部門を見つつ、6年ほど前から医療機器の部門も担当しています。輸出部門には3名の部下がいますが、専任は一人だけ。あとの2名は他の部署と兼任しています。大企業ではないので、多くの社員が全然関係ない業務を幅広くやっています」
森本「私も、営業を担当しながら広報や生産管理にも携わっています」
松岡「最近はヘルスケア用品の扱いが増えました。社会全体で健康に対する意識が高まっていると感じます。消費者のニーズに応じて会社も変化していかなければならないですね」

山本化学工業株式会社
Yamamoto Corporation. Co., Ltd.
設立1964年4月(1919年創業)

本社大阪府大阪市生野区中川5-13-11

事業内容ウェットスーツ素材の製造販売、各種用途向けゴム素材の製造販売、医療機器の製造

資本金1000万円

代表者山本富造

従業員数76名

売上高79億円

HPhttp://www.yamamoto-bio.com/


お二人の1日
もりもと・まさひこ(1970年生まれ) 出身地…岡山県 通勤時間…30分 既婚
まつおか・はやと(1970年生まれ) 出身地…京都府 通勤時間…1時間 既婚
両氏とも朝6時半には会社に到着し、事務処理を行う。特に海外とのメールが多い松岡さんは、午前中のメールチェックが重要。業務中は幅広く打ち合わせが続く。森本さんは、帰宅後にジムへ泳ぎに行くこともあるという。「着用するのは当社の素材を使用している練習用水着のゼロポジション水着です!」

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大阪市内にある本社。このフロアでは15名ほどが働いている
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ウェットスーツのみならず、映画『バットマン』や『トゥームレイダー』で使用されたコスチュームの素材提供や放射線遮蔽服の製造も手がけている
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一人の社員が複数の案件に携わっているため、社内外の様々な人々と打ち合わせをすることが多い
PHOTO:小川内孝行
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