東京チカラめし 2年で140→15店舗に激減「何がダメだった」
2015.05.24
LINEで送る

[singlemenu][ptitle]
‘11年に1号店、大ブームとなり「1000店舗にする」と社長が公言
image
1号店の池袋西口店。「ごはんがおいしくない」イメージを払拭するためのノボリが立てられている
「1000店舗を目指します!」
 ’11年6月、吉野家、松屋、すき家に続く"第4極"にならんと、勇ましく牛丼界に殴り込みをかけた「東京チカラめし」。運営会社の三光マーケティングフーズ(以下、三光フーズ)の平林実社長(当時、現名誉顧問)は当初、こうブチ上げていたハズなのだが……。
 あのときの勢いは見るカゲもない。わずか2年ほどで約140店舗と異様な早さで拡大したはずの同店が、いまや直営店12店舗、FC店3店舗という壊滅的な状況となっているのだ。
 本誌記者も平日のランチ時に都内の店を訪れたが、一度も満席になることはなく、開店当時のにぎわいはなかった。
 東京チカラめしに何があったのか。
 平林氏が一代で育て上げた三光フーズは、個室をウリにした居酒屋「東方見聞録」や、270円均一で話題をさらった「金の蔵Jr.」など、ハデな居酒屋チェーンを展開し、大成功をおさめてきた。
 やがて居酒屋市場は頭打ちになり、同社の’11年の売上高も前年比で約20億円減とジリ貧になるなか、平林氏は既存のビジネスの延長では生き残れないと悟る。そこで、「外食人生40年の集大成」と、社長自ら指揮し、東京チカラめしのデビューに注力した。
 東京チカラめしのウリは、「焼き牛丼」。甘辛く濃い味のタレをくぐらせた薄切りの牛肉を、特製のロースターでスチームしながら焼いた牛丼だ。しかも当初は、280円(並)という破格の値段だった。
「『牛丼は煮るもの』という常識をひっくり返し、新たな付加価値を生み出しました」(フードアナリスト、重盛高雄氏)
 さらに三光フーズは、過当競争の牛丼市場を生き抜くためバクチに出た。ドミナント戦略だ。特定区域に大量に出店。店を、道行く人の目につきやすくすることで、「牛丼といえば東京チカラめし」という認識を刷り込もうとしたのだ。
 当初はコッテリ牛丼は大人気となり、同社は’12年2月には40店舗、6月には87店舗と一気に攻勢をかけた。
"焼き"がアダになる
 だが徐々に、焼き牛丼の"焼き"が弱点となることが明らかになってきた。
「焼き牛丼は、普通の牛丼と違って作りおきができない。提供に時間がかかって客を待たせてしまう。焼くときに出る油煙で店舗も汚れやすい」(専門紙記者)
 しかも、急拡大で店長は急ごしらえ。店舗のマネジメントは難航した。
「席からキッチンが見えますが、丼からハミ出た肉を素手で戻しているのが見えたり、盛りつけが雑だったりと清潔感に欠けた」(前出・重盛氏)
 ’12年7月からの1年間には、60店を新規開店するも、18店舗を閉店した。店舗数が100を超え、順風満帆に見えた同社だが、実は、こうしたチグハグな拡大をしていたのだ。
 肝心の味にも難があった
「当初、中国産のコメを使っていて、これがあまりにマズかった。店側も改善しようと、途中からコメを変えたのですが、そのイメージがすっかり定着してしまった。肉そのものも、個人的な印象では脂っこかったし、焦げ臭くてなんとも……」(安うまグルメ研究家、柳生九兵衛氏)
 そこに、大手の逆襲が始まった。
「吉野家が『牛焼肉丼』、松屋が『カルビ焼牛めし』と、大手がマネを始めました。もちろんプロモーション力も店舗数も東京チカラめしより上。三光フーズには厳しい環境だった」(信州大学学術研究院、牧田幸裕准教授)
 ’13年夏の決算では、
〈店舗の見直し〉〈業態の抜本的見直し〉
 といった弱気な文字が並ぶようになった。同年の7〜12月は、67店舗を閉店せざるを得ないという惨状。ついには社内で、一般的な「煮る牛丼」に回帰するという策も検討されたという。
 そして’14年6月、三光フーズは、〈居酒屋に経営資源を集中する〉と、当初の方針を大転換。当時の全店舗の約8割にあたる68店舗を、カラオケなどを運営するマックグループに売却。9月には平林氏が現役を退き、長男の隆広氏が会社の舵取りを担うようになった。
「売却された店舗のうち2店舗を除いてすべてが赤字だった。いかに粗製乱造の店ばかりだったかがわかります。隆広氏は社長を継いだ後、社内で、『当初から成功するとは思っていなかった』とコボしていたそうです」(前出・記者)
 一方で、多くの店舗を受け継いだマック側は、「チカラめし」という企業を設立し、運営に乗り出したものの、このブランドの限界を見極めていたのだろう。チカラめしとは会社の名前ばかりで、買った店舗を、ラーメン店「壱角家」などに転換。今年5月までに同社運営の東京チカラめしは姿を消した。
 結局、残されたのは、三光フーズが運営する15店舗だけ。"国民食"牛丼の過当競争市場で生き残るのは、 かくも至難の業なのだ。
image
焼き牛丼(並)、当初は280円だったが、原料の高騰などの影響により、現在は430円(390円の店舗も)
image
店内は2人で切り盛り。提供までに5分ほど待つ。牛丼店としては時間がかかる印象
image
平林氏は神田のガード下の定食屋から飲食業をスタート。以前にも、牛丼店に挑戦したことがあったという
PHOTO:會田 園
LINEで送る