御嶽海のフィリピン出身母が語る「息子はなぜこんなに強くなったのか」
2015.11.14
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マルガリータさんがママを務めるスナックの店内にて。50人は入れる大型の人気店を切り盛りしている
 '13年は遠藤(25)、'14年は逸ノ城(いちのじょう)(22)。あまりのスピード出世で髷(まげ)が結えず、ザンバラ髪のまま幕内の土俵にあがった関取がいまの角界を盛り上げている。
 そして、今年登場したのが御嶽海(みたけうみ)(22)だ。今春、東洋大学を卒業し、名門・出羽海部屋に入門。178cm、145kgと力士としてはけっして大柄ではないが、力強い突き出し相撲で、初土俵からわずか4場所で入幕を果たした。
 長野県出身として43年ぶりの新入幕で、地元・上松町は大いに沸いている。父・大道春男さん(66)は建設関係の会社を経営し、母・マルガリータさん(45)はフィリピン出身で地元の商店街では有名な美人。彼女に御嶽海の強さの秘密を聞いた。
「一人息子ですから可愛くてね、私にとってヒーくん(本名・久司)はヒーローです(笑)。私は20歳のときに日本に来て、名古屋で働いているときにパパと恋に落ちて結婚して引っ越し、長野でヒーくんが生まれました。3歳からテレビで相撲を見ていましたよ。小学1年生のときに地元の相撲大会に出て1回戦で負けて、泣いちゃってね(笑)。それが悔しくて町のクラブに入ったのが本格的に相撲を始めたきっかけなんです。それからは自宅の庭石の上で毎日400回、四股(しこ)を踏むのが日課になっていました」
 少年時代の日々の鍛練が御嶽海の原点だろう。マルガリータさんが案内してくれた自宅の和室には賞状やトロフィー、楯がずらりと並ぶ。御嶽海は順調にキャリアを重ね、東洋大学在学中には学生横綱、アマチュア横綱のタイトルを獲得。卒業後は当初、社会人相撲の強豪・和歌山県庁に就職する予定だった。
「私たち夫婦も県庁に挨拶に行っていたから、ヒーくんから大相撲に進みたいと聞いて驚きました。安定した職に就(つ)いてもらうのが親としては一番安心じゃないですか……でも、息子が決心したことなので、私は『自分の人生だから自分で選んで後悔しないようにしなさい』とアドバイスをしました。(4場所での幕内昇進は)予想外でしたね。息子はそんなに大きくないので、身体がデキあがってから入幕できればいい、そう思っていたんですよ。贅沢(ぜいたく)な悩みですけど本当はゆっくりと昇進して欲しかった」
地元を勇気づけるためにも
 マルガリータさんは息子の一番のファンであり、熱心な相撲通だ。
「私は昔から小柄な力士が大きな相手を倒すのが好きだったんです。好きな力士は『アマ』ですね。知らないですか? 横綱の日馬富士(はるまふじ)ですよ。彼が安馬(あま)(改名前の四股名)の頃から好きでした。細いのにスピードがあって当たりも強い。あんな相撲をヒーくんにも取って欲しいです。幕内優勝? そんなことまったく考えていませんって(笑)。大関、横綱も考えていないです。とにかく怪我せず大事に相撲を取って欲しいだけ。本当に優しい子なので、土俵の鬼のような相撲取りにはとてもなれない(笑)」
 マルガリータさんは隣町の木曽町でスナックのママを任されている。巡業には御嶽海の文字が入ったトレーナーをお店のメンバーで作り、全員で応援に行った。御嶽山(おんたけさん)噴火の被害を受けた地元では、御嶽海の昇進は久しぶりの明るい話題だ。
「後援会もできて、本当に地元の応援に勇気づけられています。沈んでいた地元をヒーくんの活躍で明るくしてほしい。だけど、心配もあります。周りにチヤホヤされる社会ですので、『自分を見失うようになるな』、『絶対に天狗にはなるな』と口酸(くちす)っぱく言っているんです。ここまでこられたのは指導者の方など『周りの方々に恵まれたことを感謝し精進しなさい』ってね。ヒーくんの結婚はまだまだ考えられないけど、私よりも愛情をもっと強く持っている方と一緒になれたらいいと思っているんですよ。誰かいい人がいればいいんですけど(笑)」
 愛想が良くて明るいマルガリータさん。彼女がついているかぎり、息子が天狗になることはないだろう。開催中の九州場所では初日から2連勝。角界に「木曽の星」が旋風を巻き起こす。
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九州場所初日、新入幕の御嶽海は豪快な突き出しで豪風に勝利した
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御嶽海が小学4年生のときマルガリータさんと。中学1年生のときには全国大会でベスト8入りした
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日本大学出身で人気力士の遠藤(写真左から2番目)は御嶽海(左端)の2歳年上。大学時代は2勝3敗だった
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自宅は御嶽海が獲得した賞状などでいっぱい。「私が一番のヒーくんのファン」(写真右・マルガリータさん)
PHOTO:船元康子(1枚目) 日刊スポーツ/AFLO(2枚目)
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