のんべえライター本郷明美がぶらり往く 東京銭湯+居酒屋黄金コンビをハシゴ調査
2016.04.03
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昔ながらの銭湯と町で息づく居酒屋。そんな夢の組み合わせを巡りながら下町を堪能する極楽ルポをお送りいたします。今宵あなたもいかがでしょう?
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本郷明美
福島県古殿町出身ののんべえライター。酒と酒に合う肴をこよなく愛している。好きな酒は日本酒、ワイン、ビール。著書に『どはどぶろくのど』(講談社刊)
ガード下の飲み屋で
風呂上がりの一杯
 風呂上がりに冷たいビールをきゅっと一杯。格別ですよね。これが広い湯船に浸かったあとなら、もう最高! 東京にはまだまだ"銭湯"があります。どんどん減ってはいるけど、いまだ都内には600軒を超える銭湯が営まれています。よ~く温まってから飲む酒は、いつもより10倍おいしいことウケアイです。
 まずは御徒町(おかちまち)の『燕湯』に向かう。瓦屋根の堂々たる構え、玄関には「わ」の文字が書かれた木の板が下げられている。これ、「いた」に「わ」で「わいた」、「湯が沸いたよ」というシャレなのだとか。なるほど、粋ですねえ。女湯の戸をくぐれば、番台のおかみさんが迎えてくれる。湯船の一部は天然岩が組まれており、なんと岩風呂風!
「よかったわね、いま貸し切りよ」
 入れ違いで上がったおばさまが、声をかけてくれる。ちょうどみなさん上がったところで、浴室には私ひとり。贅沢です。大きな湯船で芯から温まったら、さて一杯いきますか。
 御徒町駅のガード下をぶらつくと、『金魚』という店が目に入った。レトロな外観と「本格焼酎の店」のうたい文句に誘われ入店。さすが専門店、男女別に先月の人気焼酎ランキングが張り出されている。女性1位の麦焼酎「いつもの奴」(550円)を注文し、お品書きをながめれば、「金魚特製ばくだん」(600円)なるものが気にかかる。説明に「特製がんもとエスニックスープのコラボ」とある。店員の男性にうかがうと、「おいしいですよ。ピリ辛のスープが命です」。そこまでおっしゃるなら、食べてみましょう。特製ばくだんは、ふわっとした口当たりの生地の中から、ニンジンやキクラゲが現れる。ほのかにスパイス香るスープの風味が、まろやかな麦焼酎ともよく合う。
「うま~い」。
 思わず声に出すと、さっきの店員さんがニッコリ。深い味わいのスープの秘訣を聞くと……やはりニッコリ。そりゃ、企業秘密ですよね。ごちそうさまでした。
 ガード下をぶらつくと、またもいい雰囲気の店構えに出会った。紺地に白の字を染め抜いた『佐原屋』の暖簾(のれん)。実にかっこいい。カウンターに座って、ホワイトボードに書かれたお品書きをながめる。「煮芋」「揚げ茄子」(各350円)、「煮こごり」(400円)……もう、いい肴のオンパレードである。数ある中から迷いに迷い、「〆サンマ」(600円)、「レバテキ」(550円)、「ギンナン」(450円)を注文。〆サバならぬ「〆サンマ」は脂ののったサンマの身をごくサッと酢でシメたもの。く~っ、たまりません。お酒、お酒。「レバテキ」は焼き具合を選べるというので、「ちょっとレアめ」でお願いした。鮮度がよいからこそでしょう、意外なあっさり塩味がとても美味。女将とその娘さんらしき女性が切り盛りする雰囲気もよく、当然おなじみさんも多いようだ。「あら、お久しぶりです」と出迎える様子が温かい。もちろん一見の私にも、「またどうぞ~」とやさしい。ああ、いい店にまた出会えました。
御徒町
ガード下の居酒屋をハシゴするのも楽しい街。銭湯も数軒あり、楽しみ方もいろいろ
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燕湯
東京都台東区上野3-14-5
電話:03-3831-7305
営業時間:6時~20時
定休日:月
460円 早朝から営業しており、朝風呂も楽しめる。岩風呂ふうの湯船、摩周湖を描いたペンキ絵が見事
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金魚
東京都台東区上野5-27-7
電話:03-3834-0107
レトロな店構えの本格焼酎の店。常時100種ほどの銘柄が揃う。豚足や牛すじなどの「煮込み」が名物
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特製ばくだん 600円
いつもの奴 550円
煮込み/玉子 100円
煮込み/もつ 100円、
牛すじ 250円
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佐原屋
東京都台東区上野5-27-5
電話:03-3831-6388
「これぞ酒場」と呼びたくなる、ガード下の居酒屋。料理は200円から、日替わりの黒板メニューは要チェック
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生ビール 500円
〆サンマ 600円
ギンナン 450円
レバテキ 550円

タルタルで食べる
安ウマ串揚げで生ビール
 門前仲町の『第二和泉湯』で、ひとっ風呂。飲み屋街がほど近いのがうれしい。体がホカホカのうちに、赤ちょうちんと縄のれんに誘われて居酒屋『夕月』へ。まずは冷たいビールを一杯……ところが、手元が狂ってグラスを倒してしまった。酒をこぼすとは、のんべえとしてなんたる失態!
「テーブルに飲ませちゃったのね。グラスが割れなくてよかったわ」
 あわてず騒がず、拭いてくださる女将さんに惚れてしまいました。オススメの「こはだ」(380円)、「〆さば」(580円)はいい具合にシメられ、酒が進む。「浦霞 禅」(780円)をすいすい空けてしまい、お代わり。追加で頼んだ「ロールキャベツ」(580円)がまた旨い。あっさりとしたトマト味、ニンニクとほのかに香るスパイスはなんだろう……。
「ナツメグが入ってるんですよ」
 と女将さん。なるほど、手間暇かけているのだ。スープまですっかり飲み干してしまいました。
 路地の奥にある風情に心惹かれ、『三久』という店に入る。外観からはわからなかったが、ここ、鉄板焼きの店でした。タコ焼きふうの粉もので、アサリ入りの「深川焼き」(830円)なるものを注文。お座敷の鉄板の一部がタコ焼きの型になっており、自分で焼くのがなかなか楽しい。アサリもたっぷり入って、いいつまみだ。ここは振り出しに戻って「生ビール」(550円)でしょう!
 日をあらためて人形町へ。『世界湯』は、外観こそ素っ気ない建物だが、一歩中に入れば昔ながらの銭湯だ。下駄箱とロッカー、籐のかご、「ケロリン」の洗面器……。中庭もある。いいですねえ。
「あら、もうあがるの。みんな最近早いわよね」と、あるおばさま。
「暮れるのが早くなったからねえ」と、別のおばさまが答える。なるほど、日暮れが早いと自然と銭湯に来る時間も早くなる人が多いらしい。たしかに私ことのんべえも、冬は風呂と飲み始めの時刻が早まる傾向にある。人形町駅から『世界湯』に来る途中で目をつけておいた、『やわらぎ』という店に直行。店先に出されていた黒板のお品書きが、いい感じだったのです。「銭湯+居酒屋」は、湯冷めしないうちにお酒で温まるのが肝心。今日のように、あらかじめ目当ての店が見つかっていると、安心なのだ。
『やわらぎ』に入って、ひとまず瓶ビールを頼んでひと息。店内はどんどん混み合い、テーブル席が満杯になろうかというころ、4人組が入ってきた。すると常連さんらしき2人が、すばやく4人に席をゆずりカウンター席へ。
「あら社長、すみません」とお礼を言うおねえさん。カウンターの奥に見える女の人と、2人で切り盛りしているようだ。店が落ち着き、私もほっとして頼んだ「イカバター」(500円)をいただく。イカの身がプリプリ、バターの風味は強すぎず、ほどよくおいしい。「ツブ貝刺身」(700円)もいい歯ごたえだ。みなさん、にぎやかに楽しげに飲んでいる。偶然こんないい店に出会えると、ぐっとテンションが上がるのです。
 ご機嫌で店を出て、これまた目をつけておいた焼き鳥屋『鳥波多゛(とりはだ)』へ。「せせり」(150円)、「ゴロ(粗びきつくね)」(200円)、「手羽先」(130円)をつまみに、日本酒「加賀鳶」(550円)をくいっといく。すっきりとしながら、味わい深く、焼き鳥によく合う。「冷製鳥ハム」(400円)は鳥のうまみが凝縮されているといいましょうか。いいつまみにつられてお代わりは、「にごり原酒」(550円)。一転、しっかりとした風味だ。ゆっくり味わっていると、店主らしき男性が、「メニューにないお酒もありますよ」と声をかけてくださる。えーと、じゃあもう一杯!
 浅草橋の『辨天湯(べんてんゆ)』はマンションの1階にある。いいなあ。私がこの上に住んだら、毎日入りに来るだろう。女湯の脱衣場では、近所のおばあちゃんたちがおしゃべり真っ最中。熱めの湯からあがると、汗が噴き出してくる。
「暑かったら扇風機をつけてもいいのよ」と、おばさまが教えてくれる。お礼を言って、ちょいとつけさせてもらう。ロッカーの上には、「落語会」のチラシ。どうやら、この『辨天湯』で定期的に催されているようだ。作りこそ近代的だが、中身は下町の銭湯そのもの。すっかりいい気分で、街へと繰り出す。
『串揚げ酒場 串ドラゴン』に入り、まずは「生ビール」(430円)。この風呂上がりの一杯、やめられません。串揚げは、50円からと格安。「うずら」(80円)、「ズッキーニ」(120円)、「豚紅生姜巻き」(150円)などを注文。食べてみて驚いた。衣はきめ細かく、丁寧に揚げられている。そしてソースだけでなく、壺入りのタルタルソースも登場。「お好みでどうぞ」と女性の店員さんがニッコリ。この値段で、なんとも細やかなのである。
 2軒目は「静岡おでん」の店『びんてじ』で、「陸奥男山クラシックヌーボー」(780円)なる八戸のお酒をいただく。季節限定の「桜海老お刺身」(550円)をつまみながら、ひと口。新酒らしいさわやかな香りが口の中に広がる。甘みたっぷりの桜海老は、量も食べ応えあり。かなり幸せです。
 今宵もいい銭湯、そしていい店に出会えました。さて次はどの街の銭湯に浸かりましょうか。

門前仲町
飲み屋街に隣接するようにたたずむ銭湯が魅力。有名老舗居酒屋から立ち飲み店まで揃う
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第二和泉湯
東京都江東区牡丹2-4-6
電話:03-3641-7802
営業時間:15時~21時半
定休日:土
460円 男湯はヨット、女湯はバンビのタイル絵がかわいらしい
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夕月
東京都江東区富岡1-7-10
電話:03-3630-1835
路地にたたずむ老舗居酒屋。料理は和洋多彩に揃う
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生ビール 380円
こはだ 380円
〆さば 580円
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三久
東京都江東区富岡1-6-12
電話:03-3643-5480
料亭のような店構え。座敷で鉄板焼きが楽しめる
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生ビール 550円
深川焼き 830円
ウインナー 600円

人形町
酒屋の前で飲む角打ちの名店や安ウマで有名な名居酒屋が揃う日本橋周辺の横綱エリア
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世界湯
東京都中央区日本橋人形町2-17-2
電話:03-3666-7663
営業時間:15時~23時半
定休日:月
460円 昔ながらの富士山のペンキ絵が楽しめる
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やわらぎ
東京都中央区日本橋人形町2-13-10
電話:03-3663-5577
刺身や煮物などホッとする味が揃う。くつろげる居酒屋だ
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ツブ貝刺身 700円
ホッピーセット 500円
イカバター 500円
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鳥波多゛(とりはだ)
東京都中央区日本橋人形町2-10-7
電話:03-3661-5588
トサカやせぎもなど希少部位が揃う焼き鳥店
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ゴロ(粗びきつくね)200円
手羽先 130円
長いも170円
せせり 150円
加賀鳶 550円

浅草橋
駅周辺はチェーン店が多いが、少し離れると個人営業の趣味性の高い居酒屋が点在する
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辨天湯
東京都台東区浅草橋1-33-6
電話:03-3864-7100
営業時間:15時半~23時半
定休日:第二・四 月
460円
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串揚げ酒場 串ドラゴン
東京都台東区浅草橋1-1-10
電話:050-5789-6311
1串50円~の安ウマ串揚げ店
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うずら 80円
アスパラ 120円
玉ねぎ 80円
ズッキーニ 120円
串かつ 120円
ほたて 150円
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びんてじ
東京都台東区浅草橋1-31-4
電話:03-3865-7220
古民家ふうの静岡おでんの店
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静岡おでん盛り合わせ 1200円
東京都内の銭湯は一律大人460円(12歳以上)。タオルのレンタルまたは販売がある。近年無料のリンスインシャンプー、ボディソープを置く銭湯も増えており、手ぶらで楽しめる(今回紹介した4軒はすべて設置)。風呂上がりはアルコールの前に、まず水分を補給しておきましょう!
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