巨人軍の2016年問題 高橋由伸監督は偉大な過去 原辰徳と闘う
2016.04.07
LINEで送る

[singlemenu][ptitle]
超人気ブログ『プロ野球死亡遊戯』がダイナマイトに登場!
6300万超えPVを誇るモンスターブログが本誌に初出張! 原監督退任、賭博問題、ベテランの不調……揺れに揺れる来季の巨人軍を、アツいファンだからこその深い愛で斬るッ!
image
原監督の退任に伴い、急遽、引退→巨人軍第18代監督に就任した由伸。入団から2年連続で打率3割超えは史上4人目の記録。巨人一筋18年、1753安打、321本塁打、986打点。妻は元日テレアナの小野寺麻衣。2女の父
「過去と闘って何が悪い! 昔を越えようとして何が悪い!」
 新日本プロレスのキング・オブ・ストロングスタイル中邑(なかむら)真輔はかつてリング上でそう叫んでみせた。とどのつまり過去とは美化されたウソである。すべてのエンターテインメントはそれぞれが持つ頭の中の美しき過去との闘いだ。たとえば先日行われたAKB48の10周年記念公演で卒業生が勢揃い。いまだ圧倒的な存在感を放つ前田敦子や大島優子の世間的知名度を今のメンバーたちが越えることは難しいだろう。最高のときは一瞬で、そのジャンルのピークはもはや過ぎ去りつつあるのかもしれない……ってだからなんやねん。それでもオレらは過去と闘いながら、美しき思い出をぶっ壊して前に進むしかないんだよ。
 2016年の読売巨人軍も同じことだ。長嶋や王が一線を退き、その後を継ぎジャイアンツを背負い続けた原辰徳もついに監督の座を譲った。栄光に彩られたひとつの時代が終わり、高齢化したチームの再建を託されたのは40歳の高橋由伸新監督。まだ巨人戦が毎試合地上波のゴールデンタイムで放送されていた頃、テレビの中の長嶋、王にあこがれて、若大将・原を追いかけて、世紀末はゴジラ松井や由伸に夢を見た。全員でバトンをつなぎ、昭和から平成にかけて地上波ゴールデンタイムのど真ん中で主役を張り続けた男たち。年間百数十試合、視聴率20%近く稼ぐ全国放送の番組で毎晩主役を張り続けるアスリートなんて今はもう誰もいない。由伸が入団した’98年の巨人戦年間平均視聴率は19.7%。3割・30本塁打をクリアした翌’99年は20.3%だ。ネットでもスマホでもなくテレビを通じ、何千万人もの人々が一緒になって一喜一憂し感情をワリカンしていたあの頃のプロ野球。日常の風景としてニッポンのお茶の間にナイター中継が存在していた時代の大トリを託されたヒーロー。高橋由伸は、間違いなく地上波中継最後のスーパースターだった。
貧打解消へ
怒濤の助っ人補強
 過去とは美化されたウソである。悲しいけど、巨人軍がスペシャルワンとして球界に君臨していた時代はもう二度と戻ってこないだろう。いまや球界は圧倒的な強さで日本シリーズを連覇したソフトバンクのひとり勝ち「1強11弱」状態。そりゃあこのご時世、新聞社より携帯電話会社のほうが勢いがある。V4を逃しリーグ2位に終わった巨人は歴史的な貧打に泣いた。チームに20本塁打以上0名は1960年以来55年ぶり。さらに2年連続での規定打席到達者の3割打者0名は2リーグ制後初の屈辱。ダメだこりゃぜんぜん打てへん。イラつくぜなんつってナイター眺めながら気を揉むよりもオレら笑顔でパイオツ揉んでいたいんだよ。あ、すいません。
 長年チームのど真ん中に君臨した阿部慎之助も36歳になり、村田修一も35歳、原監督が次世代の中心と期待した長野久義と坂本勇人のサカチョーコンビも伸び悩み。菅野智之やマイコラスといった先発投手陣の踏ん張りがなければBクラスに落ちていても不思議ではないチーム状況。ヤクルトとのクライマックスシリーズもわずか1勝しかできずに完敗。さあだったらオフはお得意の大型補強。と思ったら今のスター選手たちはみんな巨人じゃなくメジャーリーグを目指す時代。日本のエース、マエケンはポスティングで海の向こうへ、ソフトバンクからFA宣言の松田宣浩もメジャー希望のリアル。お帰りなさい脇谷亮太。って出戻り移籍の古巣復帰やん。長嶋監督のように各チームから4番打者をかき集める補強はもう不可能である。
 だったらFAじゃなく助っ人補強に活路を見出すまでだ。元ロッテのルイス・クルーズを獲得し、さらにメジャー122発男のギャレット・ジョーンズとも電撃契約、さらに22歳のキューバ代表外野手ホセ・ガルシア獲りまで噂されるジャイアンツ怒りのデスロード。当たればデカい助っ人ジャンボ宝くじぶっこみ。まあセペダ、フランシスコ、カステヤーノスは3人合わせて3打点と大ハズレかましたけれど。GJスタイルズことギャレット・ジョーンズの’15年年俸は500万ドル(約6億円)。阿部の最高年俸時も同じく6億円(推定・以下同)。ダルビッシュの日ハム時代の最終年俸は5億円。おそらくNPBの球団が出せる限界の金額がこのラインだ。他選手とのバランスも考えると軽い気持ちじゃできない大谷翔平、じゃなくて大物招聘。純粋な戦力面だけでなく是が非でも新チームの雰囲気を変えられるようなビッグネームが欲しい。だから本音を書けば、今でもドラフトではオコエ瑠偉(関東一高・楽天1位)を単独1位指名すべきだったと思っている。カン違いしないでほしいけど、巨人ドラ1桜井俊貴(立命大)は新人王候補の即戦力右腕だ。それはそれこれはこれ。長嶋監督にはゴジラ松井がいて、原監督には坂本勇人がいた。なら由伸監督には誰がいる? スポーツ新聞の1面もいつまでもミスターや若大将に頼っているわけにはいかない。11月下旬にジャイアンツファンフェスタで行われた由伸引退セレモニーは素晴らしかった。だが唯一足りなかったのが「選手ヨシノブの継承」ではないだろうか? もしあの場で、ドラ1オコエ君が背番号24のユニフォーム姿で登場したら爆発的な盛り上がりを見せたと思う。今の巨人は「暗い話題」を吹き飛ばす陽性のスーパースターを欲しているのだから。
プロ野球 "昭和90年"問題
 暗い話題……そう、球界を揺るがした例の野球賭博事件である。福田聡志、笠原将生、松本竜也の3投手が野球賭博に関与、球団を解雇されNPBからは無期失格処分。個人的に最も驚いたのは、ジャイアンツ球場のロッカールームで複数の二軍選手が賭けトランプをやっていたというニュースだ。電車の中でエロ本読むバカいるかよ。じゃなくて、何て言うのか「すげー昭和だな」と思った。それを職場のロッカーでやっちゃう感覚が。別に昭和のプロ野球選手がどうだったかなんてぶっこみたいわけじゃない。ひと言で言うと、21世紀ニッポンの世間一般の感覚とズレまくり。そのズレを指摘できる大人が周りにいなかったことが悔やまれる。
 いまだ終わらない昭和を生きる日本球界。まるで平成27年ではなく昭和90年だ。チームの赤字も親会社の宣伝費として割り切って補填する古きよき時代の企業スポーツ。まさに「昭和的なあいまいさ」の象徴だったプロ野球。けど世の中はもうその手のユルさを見逃してくれやしない。正義の押し売り。何かあれば一瞬でネットは炎上だ。そしてあらゆる記事はググればいつでも誰にでも読めてしまう。一度しくじったら敗者復活の難しい社会。これから処分された3選手はどう生きていくのだろうか? 物心ついたときから野球に打ち込み地元じゃちょっとした有名人。ウン千万円の契約金をもらい同世代のサラリーマンよりはるかに高い給料を受け取る花の都大東京生活。これで調子に乗るなというのもムリな話だ。もちろん彼らは野球協約に抵触する過ちを犯した。野球選手としての復帰はほぼ絶望的だろう。それでも、人生は続いていく。
 不謹慎だと怒られるかもしれないが、まだ20代前半で日本人離れした体格の笠原や松本はプロレスラーという道もあるのではないか。ひとり勝ちを続ける新日本プロレスの象徴オカダ・カズチカは28歳。同世代や年下の日本人レスラーでライバルとなるような存在は皆無だ。東京スポーツ新聞社制定「2015年度プロレス大賞」新人賞でも’74年の創設以来初の該当者なし。今、プロレス界は若い才能に飢えている。あのジャイアント馬場が巨人投手からプロレス転向したのは22歳の青い春。現在24歳の笠原は身長190㎝。22歳の松本は身長193㎝。ちなみにオカダの身長も191㎝。とくに笠原はグラウンド上でキューバの至宝グリエル(当時DeNA)に向かって吼えるハートの強さも持っている。いやホントに金の雨に対抗して銀の雪を降らせられるヘビー級の若い逸材っすよ、新日さん。
 世の中何が起きるかわからへん。一寸先はハプニング。それこそ昭和エンターテインメントの真髄だ。これまでの巨人歴代監督も皆それぞれバリバリ昭和だった。ミスターや原監督はいわば周囲を驚かせ常にサプライズを提供してくれる「劇場型監督」にして「炎上型監督」。カメラマンがネタに困ればサービスカットの連続。読者もそこに乗っかってキャンプ地でタイガーマスクを被る原の辰っつぁんに拍手を送る。いわば監督とマスコミとファンがスクラムを組んで阿吽(あうん)の呼吸で作り上げるプロ野球黄金三角関係。だが、その古きよき「昭和感」は由伸監督で終わりを告げるだろう。もちろん巨人で’70年代生まれの人間が監督をやるのはチーム史上初。他球団も含め全員40代となったセ・リーグ監督新世紀。彼らは「炎上型」というより冷静な「鎮火型監督」である。思い出してほしい。背番号24だっていつの間にか燃える男中畑清の泥臭いイメージから、由伸のクールな都会的な雰囲気に染まっていった。2016年、40歳の由伸監督から新しい何かが始まろうとしている。
崖っぷちのV3戦士たち
 巨人軍では今オフに三軍の創設を発表。育成選手を中心に20~25名の規模になる見込みで対戦相手は国内独立リーグ、大学、社会人などを予定。公式ページによると「年間90試合程度の実戦経験の場を設け、若手選手の育成を図ること」が目的だという。つまり、もう一度ジャイアンツ球場を闘いの場所に戻す作業だ。ナアナアのなれ合いじゃなく、二軍と三軍の激しい生存競争。もうロッカールームでトランプなんかやっているヒマはない。監督が代わりチーム体制も大きく変わった。過剰とも思える怒濤の助っ人補強にはあらゆるメッセージがあると思う。もう阿部や村田を特別扱いしない。そして同時に岡本和真も特別扱いはしないよと。35歳も19歳も助っ人も育成選手も横一線でやってもらう。だってプロ野球だもの。今季トップバッターとしてブレイクした立岡宗一郎じゃないけど、本当に力のある選手はどんな形であれ頭角を現す。限られた時間のほんのわずかなスキマをついてその数ミリを突破してくる。今こそ勝負のとき、ゴチャゴチャ言わんと誰が一番強いか決めたらええんや。
 若手の挑戦を受けて立つ一軍選手たちもそれぞれ崖っぷちだ。4年契約が終わった杉内俊哉は自ら申し入れプロ野球史上最大の減額となる4億5000万円ダウンの5000万円+出来高の単年契約。身体もサイフもギリギリまで追い込み右股関節手術からの復帰を目指す。対照的にわずか2勝の内海哲也は年俸固定制の大型複数年契約に救われ4億円の現状維持で更改、こちらも’16年シーズン終了後に4年契約が切れる正念場。不調にあえいだ元選手会長の村田さんも3年契約最終年。今度ダメならもうその次はないだろう。もちろん捕手から一塁転向しながら復活とはほど遠い成績で終えた阿部慎之助だって同じことだ。阿部、村田、杉内、内海……原巨人のV3を支え続けた30代中盤の男たちがそれぞれの野球人生を懸けた勝負に挑もうとしている。彼らの敵は若手じゃない。「過去の自分」である。全盛期バリバリだった頃の姿にどこまで戻せるのか? ある名選手は昔の自分の映像を観ていたら不意に涙が出てきたという。今のオレにはもうあんなフルスイングはできない。そう思うと悔しくてみじめで泣けてきた。正直、終わりは近い。だけどまだ終わったわけじゃない。ちきしょう、過去なんてぶっ飛ばせ。
「誰が言ったかは覚えちゃいねぇ。過去には勝てねぇ。昔の思い出とは闘えない。そんなこっちゃわかんない。過去と闘って何が悪い! 昔を越えようとして何が悪い! 未来はオレが作る!」
 中邑真輔は正しい。おそらく由伸新監督も遅かれ早かれ過去と闘うことになるはずだ。果たして、高橋由伸は偉大なる名将原辰徳という過去を越えることができるだろうか?
 See you baseball freak……
image
CSでヤクルトに敗れた試合直後、阿部、坂本に「オレやめるから」と言って退任した原前監督。退任後、「2016年度、仮に監督をやっていたら慎之助には『来年はキャッチャーだ。ファーストは君は難しい』というふうに言ってるね」と、由伸監督を迷わす余計なひと言も
image
男・村田修一、35歳(右)。今季は打率.236、12本塁打と不調を極めた。来季はロッテから移籍するクルーズが三塁手を務めるという話もあり、レギュラーは保証されていない。阿部慎之助、36歳(左)。今季は打率.242、15本塁打。2人の復調はあるのか……
image
中溝康隆(なかみぞ・やすたか)/’79年埼玉県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。’10年よりブログ『プロ野球死亡遊戯』を開始。巨人ファンを中心に累計6300万PVを記録し話題となる。初の単行本『プロ野球死亡遊戯 そのブログ、凶暴につき』(ユーキャン)が絶賛発売中。『ヤングアニマル』にて巨人二軍レポート「未来は僕等の手の中」連載中
LINEで送る