東電 広瀬直己社長 「電撃辞任騒動」の真相
2016.04.11
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分社スタート前日まで新任役員が決まらない混乱の裏に何があったのか
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分社スタート直後の5日、出社する広瀬社長。福島や新潟など原発立地周辺へのお詫び、ご説明行脚が続く
「『65年続いている東京電力株式会社の名前を消して、新会社でのスタートとなります。人事の遅れは熟慮の結果です。自由化に向け、選ばれた人には頑張ってほしい。私も強い思いで経営にあたる』
 広瀬直己社長(63)は社内でそう述べたと聞いている。人事の発表が極端に遅れたことの背景に、かなりの混乱があったことを示唆していた」(経産省幹部)
 原発事故から5年。東京電力が4月1日、ついに分社化された。東京電力ホールディングスという持ち株会社の傘下に、燃料・火力発電(東京電力フュエル&パワー)、送配電(東京電力パワーグリッド)、小売り(東京電力エナジーパートナー)の3社がぶら下がる形になった。
 この「分社化」の人事をめぐって、異例の事態が起きていた。全国紙経済部記者は、異変を感じ取っていた。
「広瀬社長による各社の役員人事発表は、分社発足前日の3月31日夕方5時にずれ込んだ。同日メディアに配布された文書にも、『4月1日以降の執行役及び各基幹事業会社取締役及び監査役の候補者を決定、内定しました』としているが、役員など幹部人事が前日に『内定』することなど普通あり得ない。社内でかなりの綱引きがあったようだ」
「悪しき東電に戻った」
 東京電力の役員人事は、社内、社外5名の取締役で構成される「指名委員会」で決定される。
 現在の指名委員会メンバーのうち、東電プロパーなのは広瀬氏だけで、數土(すど)文夫会長はJFEホールディングス元社長、西山圭太取締役は経産省からの出向。元総務相の増田寛也氏と、武田薬品会長の長谷川閑史氏は社外取締役だ。
 実は今年初めごろから、水面下で広瀬氏の「更迭」が検討されていたという。
「昨年10月、西山取締役は役員会で緊急動議を発し、旧経営陣との接触を禁止する異例の文書を出した。事故時の東京電力のドン・勝俣恒久元会長らが、いまだにプロパー社員を通じ、東電の経営に影響力を行使していると疑ったようです。東電では重要情報がしばしば外部に漏れ、経産省からの出向幹部を名指しする怪文書がバラ撒かれるなど、異様な動きがあった」(東電OB)
 數土氏も’14年、JFE差し回しの高級車で毎週末ゴルフに行っていたことを本誌に報じられ、「社内に情報を漏らしているヤツがいる」と犯人捜しに躍起になっていた。最近も、
「悪しき東電体質に戻り始めている」
 と話すなど、プロパー組への不信感を募らせていた。その標的となったのが、広瀬氏だ。社員がたびたび社長室に出入りし、業務打ち合わせを繰り返しているのも、數土氏の疑心暗鬼を募らせた。
「數土氏や西山氏は、広瀬社長が情報漏れを黙認していると思い込んでいた。広瀬氏を社長から外し、定款に規定のない副会長ポストを新設して棚上げする案が浮上。後任には、プロパーだが數土氏らに従順な佐野敏弘副社長の昇格を想定していた。佐野氏は火力発電畑出身で、企画部や総務部など経営中枢部門の経験がなく、『東電色』に染まっていないと見られた」(東電関連会社社員)
 一方広瀬氏の側もこの動きを察知。社外の関係者に、
「副会長に追いやられて窓際になりそうですよ」
 とボヤいたという。一時は副会長ポストを拒否して辞任を示唆するなど、指名委員会は混乱が予想された。
「結局、3月17日、23日に予定されていた指名委員会は開催できず、人事がギリギリまでずれ込んだ。最後は東電の混乱を危惧した首相官邸から『どうなっているんだ』と問い合わせが入り、數土氏、西山氏が譲歩して、ようやく広瀬氏の続投が決まった」(同前)
 とはいえ今回の分社化で、広瀬氏はこれまでの「新成長タスクフォース長」の肩書を外され、「原子力改革特別タスクフォース長」だけが残った。さらに広瀬氏が社長を務める東京電力ホールディングスが原発事業と廃炉を所管することとなり、これでは、原発関連の「汚れ仕事」だけやっていろというに等しい。
「プロパー」と「進駐軍」で真っ二つに割れた東電。広瀬氏は自宅前での本誌の問いかけに、無言で車に乗り込んだ。
 原油価格の低下で業績が急回復した途端の内紛。東電の体質は変わらない。
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「東電改革」を進める數土会長だが、社内には反発も多い。昨年1月には全国紙が數土氏の退任情報を報じた
PHOTO:小松寛之
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