早くも余震700回超!「熊本地震」 の正体と次に来る「新型地震の恐怖」
2016.04.22
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ナゾだらけ!
東に、南西に移動する震源
余震は1ヵ月以上続く
東京・和歌山の揺れとの関係は?
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益城町の商店街は建物が大きく損壊し、人影もまばら。18日、同町の中心部に延びる新たな断層が発見された
 死者48名以上。甚大な被害をもたらした熊本地震は、「いままでの経験則で言うのは難しい」と気象庁が嘆くほど、何もかも異例ずくめの震災となった。
 4月14日夜に熊本県でM6.5、最大震度7の地震が発生して以降、震度5以上の地震が頻発し、16日未明にはM7.3、最大震度7を記録。19日夕方にも震度5強の地震が起き、震度1以上の地震は1週間で700回弱に達した。
 これは内陸型としては’04年の中越地震を上回る、史上最大規模の余震数。いつまで経っても、揺れが止まらない、新型とも言える地震なのだ。
前震とは何か? 余震はいつまで?
 14日の「前震」よりも巨大な「本震」が翌々日未明に発生したのも、今回の一連の地震の特徴だった。
「14日の揺れが前震で、16日の本震は前震の十数倍のエネルギーでした。一般的に一連の地震の中で最大規模の地震を『本震』と言いますが、熊本地震は『前震本震型』でした。群発型地震というものもあります。これは本震に近い規模の地震が、何度も起こるというものです。熊本地震は、『群発型』とも考えられます」(鹿児島大学大学院准教授で地質学専攻の井村隆介氏)
 前震は大地震の前触れだが、発生しないことも多く、明確な定義もない。気象庁は18日、1週間は余震に警戒してほしいと発表したが、井村氏はその期間では短いと言う。
「16日の地震が本震であれば、そこからどんどん余震は減っていくはずですが、それが減っていっていない。それはまだ大きな地震が来る可能性があることを意味しています。
 どれが本震だったかは、後になってみないとわからない。余震の動静を見守りつつ、1〜2ヵ月は警戒したほうがいい」
 東日本大震災では東京23区で震度5弱〜5強の揺れを記録し、パニックとなった。長期間このレベルの揺れが続けば、住民の心労は計り知れない。
なぜ生き物のように震源が動くのか?
 熊本地震のもう一つの特徴は、揺れるたびに震源が東西に移動することだ。
「地震の原因となった断層面(地層のズレ)が1枚なら通常の動きで終わるのですが、このエリアは断層が東の別府湾まで何本も連続して並んでいるため、地震が次々と連鎖しているんです」(東京大学名誉教授の笠原順三氏)
 しかも東だけでなく、これから西にも広がる可能性がある。熊本地震は主に日奈久(ひなぐ)断層帯、布田川(ふたがわ)断層帯のズレによって発生した。地震調査研究推進本部(地震本部)が発表している長期予測によれば、30年以内に巨大地震が起きる可能性は日奈久断層の東部で0〜6%、南西部で0〜16%。なお阪神・淡路大震災のときに活動した六甲・淡路島断層帯の地震発生直前の確率は0.02〜8%だった。
「日奈久断層帯は地震発生地から南西に八代市を通って水俣市沖まで続き、この部分がまだ壊れていない。ここは断層の長さなどから、M7を超える地震が想定されている地域です」(前出・井村氏)
 約20年前の鹿児島県北西部地震では、1度目の地震は3月末、2度目は5月の中旬に発生した。「『群発型』であれば、半年くらいの期間に、同じ規模の地震が起こることもありえます」(同前)という。九州は当分の間、大きな揺れに悩まされることになりそうだ。
次に危険な断層はどこか?
 日本には活断層がおよそ2000あると言われ、日奈久断層帯と同じ危険レベルにある活断層は日本にいくつもある(下図参照)。地殻変動の専門家である元前橋工科大学教授の濱嶌(はまじま)良吉氏は西日本、近畿地方への波及を懸念する。
「熊本地震は、奈良県香芝市から愛媛県伊予市沖までを横断する日本最大、最長の断層帯『中央構造線断層帯』の活動と連動する可能性があります。
 1596年9月1日、中央構造線断層帯の西に連なる大分県でM7.0の地震(慶長豊後地震)が発生し、その4日後、東に連なる近畿地方でM7.5の地震(慶長伏見地震)が起きました。現在、中央構造線断層帯に溜まっている力は限界に近いと私は見ています。そんななか、過去に中央構造線の並びで、大規模な地震が九州から近畿に誘発され連続して発生していることは注目に値します」
 たとえば上町断層帯は大阪府豊中市から大阪市、岸和田市の住宅地の下を通り、地震本部によれば、M7.5程度の地震が30年以内に2〜3%の確率で発生する。
 地震学の権威で、元京都大学総長・現京都造形芸術大学長の尾池和夫氏は以前から「南海トラフ地震」より前に、内陸の3〜4つの活断層が地震を起こすだろうと主張していた。
 尾池氏が可能性を指摘していたのが、今回大地震を起こした熊本の日奈久断層帯、そして「中央構造線断層帯の紀伊半島の中央から西の和歌山市までのエリア」「奈良盆地の東縁断層帯」だった。
「フィリピン海プレートがユーラシアプレートに沈み込む力によって起こるのが、南海トラフの巨大地震ですが、その前段階で、内陸の活断層の古傷に力が加わりストレスになるのです。
 特に中央構造線の紀伊半島西側の和歌山市周辺にはまだエネルギーが残っており、熊本地震に続く可能性があります。あとは奈良盆地東縁断層帯も危ないでしょう。福岡県にある警固(けご)断層帯にも内陸の部分には力が残っています。これは福岡市の真下を通り、都市部ですから、発生すれば相当な被害が想定されます」
 尾池氏の分析を裏打ちするように、4月1日には中央構造線東端の和歌山県沖で最大震度4の地震が発生していた。
「和歌山ではずっと群発地震が起こっています。それが前兆かもしれない。地震学者としては、とても危ない状況に見えます」(同前)
南海トラフ地震との関係は?
 尾池氏が言うように活断層を原因とする地震が発生することは、南海トラフ地震が近い証しでもある。前述の慶長豊後地震でも、発生から9年後に南海トラフによる大地震が起きている。
「阪神大震災、今回の熊本地震の発生を考えると、南海トラフのエネルギーは溜まっていると考えることができます。南海トラフはおよそ100年から200年の間で地震を引き起こしています。前回は約70年前で、またその周期に近づいているので注意すべきだと言えます」(元産業技術総合研究所客員研究員で、地震考古学者の寒川旭氏)
 4月14日、東京都でも内陸直下型の地震が発生した。震度は2だったが、都内23区が震源地となる地震は年に1〜3回ほどしかない。しかも時刻は、熊本地震発生のわずか30分前だった。
 いまのところ熊本地震との直接の関連は薄いと見られているが、「これまでの経験則」がもはや当てはまらないことは前述の通りだ。果たして単なる偶然と言い切れるのか。
「東日本大震災のような海溝型の地震は150年から300年に一度起こるので、日本人は何度か経験しているが、熊本地震は内陸直下型で、このタイプの地震は1000年から数十万年に一度の周期で発生します。恐らく過去にもあったのでしょうが、その時は熊本に誰も住んでいなかったか、少なくとも記録できていない。発生の周期があまりに長いので、前回のデータがないのです」(武蔵野学院大学特任教授で地球物理学専攻の島村英紀氏)
 日本列島を貫く断層に、なにやら巨大な異変が起きている。どうやら、それだけは確かなようだ。
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PHOTO:濱﨑慎治 幸多潤平
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