カルロス・ゴーン社長が始める「三菱自非情のリストラ」
2016.05.24
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「日産2万人首切り」の悪夢、再びか
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会見に立つカルロス・ゴーン氏。不正公表からわずか20日あまりでのスピード合意を実現させた
 岡山県倉敷市水島海岸通1丁目1番地――。倉敷の沿岸部は、三菱自動車の倉庫や流通拠点が立ち並ぶ「三菱城下町」だが、その中心にある巨大工場・水島製作所はいま、閑古鳥が鳴いている。
 燃費偽装問題の発覚によって一部の生産ラインが止まって以降、1300人の従業員が自宅待機を命じられ、敷地には2000台以上の新車の軽自動車が置かれたままだ。
 5月12日、日産自動車のカルロス・ゴーン社長(62)は苦境の三菱自動車に2373億円を出資し、34%の株式を取得して事実上傘下に収めると発表した。会見した三菱自の益子修会長はゴーン氏と笑顔で握手してみせたが、本当にこれで三菱自動車が救われたのか。
「三菱自は国内で6万台の軽を販売しています。現実問題としてこのままでは売れないでしょう。さらに軽以外の4万台も燃費の数値が不正だという話になれば、国内の販売は限りなくゼロに近づきます」(アドバンスト・リサーチ・ジャパンのマネージングディレクターの遠藤功治氏)
 ゴーン氏はトヨタなどに対抗するため、以前から三菱自動車を吸収合併することを狙っていたが、不正発覚後、株価が半値近くまで下がったタイミングで出資を申し入れ、電撃的に手中に収めた。好機を見逃さなかったのだ。
 とはいえ、いまの状態を放置すれば、三菱は赤字を垂れ流すだけ。ゴーン氏はどのような手法で再生させるのか。
「ゴーン氏は日産のときと同じことをやるでしょう。合理的に物事を進めるのは良いのですが、彼の場合、日本の良き企業文化をまったく考慮しないで無神経にリストラする。あくまで想像ですが、三菱自動車も相当クビを切られるんじゃないでしょうか」(元日産取締役で衆議院議員の奥野信亮氏)
 ’99年、販売不振に陥った日産に送り込まれたのが仏ルノーのゴーン氏だった。「日産リバイバルプラン」と呼ばれる大胆な改革に乗り出し、村山工場をはじめとする生産拠点を閉鎖。従業員の14%にあたる2万1000人のリストラを推し進め、業績を回復させた。
「ゴーン氏はコストカッターと恐れられましたが、これから大幅に三菱自動車を作り直すことになるでしょう。過去の膿をすべて出し切るためにも、管理職マネジメント部門はそっくり入れ替えることが不可欠です。現場の従業員も相当数がリストラを避けられない。三菱自動車の業績の落ち込みや事態の深刻さはまだ全貌が見えません。今回のリストラは前リコール問題の際のリストラよりも大規模になることも考えられる。主力工場の水島製作所であっても、ゴーン氏が不要と考えれば売却する可能性は高いと思います」(経済評論家の山崎元氏)
 日産が苦手とする軽自動車、東南アジアでのSUV、四駆販売は残るが、それ以外の国内販売や経理、総務など、日産と重複する部門は合理化の対象とされることが確実。ゴーン氏は5月12日の会見で、三菱自の益子会長を隣にして、
「三菱自動車が変わろうとしなければ、我々はここにいない。三菱自動車は必ず変わる。ただ、その変化は三菱が起こすべきだ」
 と語った。東京商工リサーチによれば、全国に三菱自動車の関連企業は第一次下請けだけで1356社に上り、総従業員は41万人を超える。
 ゴーン氏の軍門に下った、三菱自を待ち受ける未来は厳しい。
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現在、軽自動車の生産ラインが止まっている水島製作所
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燃費偽装を謝罪する三菱自の相川哲郎社長(右)。責任を取って6月24日付で辞任すると発表した
PHOTO:蓮尾真司(ゴーン、相川社長) 共同通信社
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