「第2の飯島勲」官邸を支配する最強秘書官 今井尚哉氏の権力
2016.06.13
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財務省にも内密に
「リーマン前夜」と言い切った
文書を作成し、
解散戦略を練るキーマン
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常に首相と行動を共にする。「地方創生」「一億総活躍」などのスローガンを発案、「安倍首相のひとり電通」という評も
「我々は総理の下僚です。いつまでも、お仕え申し上げます」
 そう言われた安倍晋三首相(61)は、思わず笑みを浮かべたという。
 いまもっとも首相に近い男・今井尚哉(たかや)秘書官(57)は、経産省のキャリア官僚出身でありながら、ときに歯の浮くような言葉も平気で口にする。
「ここは(衆参)同日選に打って出るべきです。仮に10や20、議席が減ったとしても、総理の責任論になどなるわけがありません。総理、いま政界に、総理のライバルになり得る人はいますか?」
 要所要所でプライドをくすぐる言葉をはさみ、安倍首相を鼓舞する。もはや首相にとってなくてはならない存在。
「今井君が言っているから」とたびたび首相がその名前を引き合いに出す今井氏の存在感が、重みを増しつつある。
「消費増税先延ばしの根拠になった、『リーマン・ショック前夜の経済状況に似ている』というペーパーは、今井氏が作成したものです。サミット直前、この文書を見せられた財務省の田中一穂事務次官は、『こりゃ、怪文書だわな』と漏らした。
 麻生太郎財務相は文書を見せられ、『なんだこれは! 仙台(G7財務相・中央銀行総裁会議)ではこんな話になってないぞ!』と怒鳴った。温厚な谷垣禎一自民党幹事長も文書を凝視し、『これは今井はやり過ぎだ』と話したそうです。誰もが文書を見た瞬間に今井氏の関与を確信したが、結局増税延期をゴリ押しされてしまった」(全国紙政治部記者)
 重要政策に対する今井氏の影響力はそれだけではない。昨夏に発表された「戦後70年談話」の草稿は、首相と今井氏らごく少数で作成したという。
 昨年9月に発表された「一億総活躍社会」というスローガンも同様だ。
「今井氏が提案して、総理が『よし、それでいこう』と。仮に批判されても安保関連法から国民の目をそらすことができるという深謀遠慮です」(自民党職員)
 首相の密命を受け、拉致問題解決の根回しのため密かにモンゴルに飛び、北朝鮮当局者との接触を図っていたことも明らかになった。
華麗なる一族出身
 今年初めからは消費増税延期と、解散総選挙に向けた戦略に知恵を絞っていたが、熊本地震などで解散は断念した。
「総理の日程調整を今井氏が一手に引き受けているから、どうしてもみんな遠慮してしまう。国対委員長の佐藤勉氏でさえ総理への面会を断られ、『おいおい何様だよ』とこぼしていた。言うなれば、小泉政権のお庭番兼知恵袋だった飯島勲さんのような存在。安倍首相の出演するメディアを選別する手法なども、飯島氏から学んだものでしょう」(同前)
 今井氏は、栃木県出身。
 父親は精神科医で、伯父の今井善衛氏は元通産省次官。同じく伯父の今井敬氏は元新日鐵社長、経団連会長という秀才揃いの、華麗なる一族だ。今井氏自身も名門・宇都宮高校を経て東大法学部に進んだ。
「部活(テニス部)もやっていて、ガリ勉ではなかった。自分から率先して何かをやるタイプではないが、協調性が高かったね」(高校の同級生)
 高校時代は「ダブルフォールトの今井」と言われた、と本人がのちに語っている。いつも力任せにサーブを打つため、失敗することが多かったという。’82年に通産省に入省。この年は現官房長の嶋田隆氏ら優秀な人材が揃い、「華の(昭和)57年組」と言われた。
 今井氏は入省後、日本機械輸出組合や資源エネルギー庁などで勤務し、’06年第一次安倍政権で秘書官に抜擢され、首相の信頼を得た。
「今井さんは’07年に首相が退陣したあとも、連絡を取り続けた。海外出張から戻ると手土産を持って富ヶ谷の安倍邸を訪問。休日には安倍氏と高尾山トレッキングにまで同行した。『必ず政権は自民党に戻ります。いまの自民党で、華のある政治家は安倍さんだけ』と励まし、総裁選出馬を後押しした」(経産省OB)
 増税延期で麻生氏、谷垣氏を敵に回し、政界から厳しい視線も注がれているが、安倍首相が在任中、今井氏を決して手放さないことだけは確実だ。
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6月7日、自民党役員会に同席。参院選のマニフェスト作成に関わったという情報も
PHOTO:鬼怒川 毅
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