連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第6回 防御率1 位! D e N A 投手陣は何が変わったのか
2016.06.18
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4戦4勝、防御率0.33で5月の月間MVPに輝いた石田。150㎞を超す真っ直ぐが武器だ
 昨季はリーグワーストだったチーム防御率が今季は1位(3.80→3.02。数字は6月13日現在)へと一変。DeNAベイスターズが首位争いを繰り広げています。
 就任当初からラミレス監督(41)はバッテリーに「打者の内角を攻めろ」と求めていました。実践できている結果でしょう。
 エースの山口俊(28)が完封勝利をあげた6月5日の千葉ロッテ戦を横浜スタジアムで観戦しましたが、内角攻めの効果が見て取れました。山口がインサイドを効果的に使うため、千葉ロッテの打者たちが甘い変化球を見逃すケースが目立っていたのです。
 インサイドを意識させられると、バッターは球種に加えて、コースも考えねばならなくなる。思い切ってスイングしづらくなるのです。結果的に、打ち損じが多くなり、打者不利なカウントに持ち込みやすくなります。実際、昨季のDeNAは与四球の数がリーグ最多でしたが、今季はリーグ最少へと大きく改善されています。
 開幕から2ヵ月以上経(た)ちますが、「今季のDeNAバッテリーは内角もしっかり投げてくる」という印象を相手に与えられたことで、投手も変化を実感しています。
 先発の柱の一人、井納(いのう)翔一(30)は僕に、
「勇気を持って内角に投げられるようになったことで、投球の幅が広がりました」
 と手応(てごた)えを口にしていました。
 極端に言えば、これまで外側の半分しか使えていなかったストライクゾーンが、目いっぱい使えるようになったわけです。
 内角攻めは速い球が効果的なので、井納や山口ら、速球投手が使えばさらに生きてくる。5連勝をマークした2年目の石田健大(けんた)(23)、ルーキーながら5勝をあげている今永昇太(22)もそれに当てはまります。
「そんなに有効ならもっと前から、インサイドに投げればよかったのではないか」と思う方もいるかもしれません。ただ、言うは易しで、内角攻めには、かなりの困難が伴います。コースに投げ切れずに中に入ってしまえば長打を打たれるリスクが高くなりますし、逆に内に行き過ぎればデッドボールになる。技術はもちろん、勇気、覚悟が必要なのです。
 アウトコースだけで抑えられるなら、そうしたい――プロの投手でもそんな心理になるものですが、外角にくるとわかっていれば、どんなに速い球でもバッターは打ち返してくる。だから、僕は現役時代、「打者の足を動かす」ことを心がけて、打者のヒザの近くを狙って投げていました。打者が一番嫌がるのは顔の近くに球がくることですが、コントロールミスが怖い。でも、足元ならば打者も避けやすい。それでいて打者は足を動かされるのを嫌うので、効き目が大きかったですね。
 エースになるためには、強い気持ちで内角に投げ、打者に「この投手はインサイドを攻めてくる」と意識させておくことが欠かせません。
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さいとう・かずみ/’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率.775。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
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