台湾企業に買い叩かれたシャープ 悲痛リストラの全貌
2016.07.05
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「悪い卵しか産まない鶏はいらない」とは、何たる言い様!
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8月末に閉鎖される予定の天理工場。130人強の従業員は、他の拠点へ配置転換されるという
 経営再建中のシャープの30代の社員が、本誌の取材に応じた。
「相次ぐリストラで人が次々に辞めていくので、生産工程が次々に変わって、現場はパニック状態になっています。これまでの生産ラインは、一定量の商品を作り続けていくやり方でしたが、いまは必要な量を一気に作って、なくなればまた作って、という形に変わりました。
 鴻海(ホンハイ)に買収されたことによってこの先、会社がどう変わるかわかりませんが、組合は『この波に乗るべきだ』と言っています。それでも家族持ちの社員は将来への不安から続々と辞めていき、残っているのは独身者が多いですね。私もその一人ですが」
 台湾の精密機械製造大手・鴻海精密工業は今春、シャープに3888億円の巨額出資をして買収することを決定、そのうち1000億円をすでに払い込んだ。
 資金面でひと息ついたシャープは6月2日、フジテレビからフリーになった加藤綾子アナウンサーをCMに起用すると発表。加藤が出演するアクオスフォンのCMが、6月からテレビで流れ始めた。
「反転攻勢」を目論むシャープだが、頼みの大口顧客・アップルiPhoneの低迷もあり、株価が下げ止まらない。
 6月23日の株主総会後もズルズルと下げ続け、27日にはついに95円となった。この株価で計算すると、シャープの時価総額は1616億円。さらに多額の有利子負債もある。
 わずか1600億円の会社を3888億円も出して買ったとなれば、「高値づかみ」になりかねない――鴻海を率いる総帥郭台銘(かくたいめい)氏は、怒り心頭に発していた。
「日本式のやり方が会社に利益がないと判断したら、きっぱりカットする!
 場所を変えても、飼い主を替えても悪い卵しか産まない鶏はもういらない。カットすべき人はカットする」
 と発言。シャープ次期社長の戴正呉(たいせいご)氏も、「カネ持ちの息子のようだ。贅沢で、納期もコスト意識もない」と同調した。
「郭氏と戴氏は、すでにシャープに乗り込み、徹底的な合理化を進めています。天理工場の閉鎖、堺工場への本社移転だけでなく、顧客との納期や金額交渉のほか、関連会社の余剰費にまでメスを入れている。それでもなかなか業績が上向かないんです」(経済誌記者)
 郭氏は、「信賞必罰」という言葉を使って、能力主義で報酬を支払うことや、今後の7000人規模の人員削減まで示唆した。瀕死のシャープに巨額のカネをつぎ込む以上、鴻海流で徹底的に鍛え直すという意思表示だろう。
人員削減は得意中の得意
 9人の取締役のうち、6人を鴻海側が指名し、取締役会の支配権も握った。すでにシャープは、台湾の会社となった。
「プライベートジェットを使って、郭氏はしょっちゅう日本に来ている。会議では幹部に対して声を荒らげることもあるようです。比較的若い人や、英語が堪能な人は鴻海との合意をチャンスと捉える雰囲気はあります。中年以上は諦めムードです。成果主義は不安ですが、受け入れていくしかない」(前出・30代社員)
「4月ごろの、郭会長から社員向けのメッセージでは、人員削減が必要と考えていると軽く触れられていました。いまのところ具体的には進んでいないようですが、社員は覚悟していると思います」(別の中堅社員)
 鴻海はこれまでにも、子会社を通じて買収した奇美電子を吸収合併し、企業名を残すと約束しながら社名を変更したり、子会社にロボットを導入し6万人の従業員をリストラしたこともある。労働環境の悪さを訴える従業員が数千人規模のストライキをしたこともあった。
 今後、シャープでは何が起きるのか。
「鴻海も必死なんです。彼らには製造力と資金はあるけど、開発力はないですから、シャープの家電技術が欲しかった。液晶だけでなく、白物家電、今後は有機ELパネルにも投資していくでしょう。
 問題は7000人ものリストラで、シャープの社員がモチベーションを保てるか。今後多くの人が会社を去り、残っても成果主義になる。いままで通りにはいかず、キツくなるのは間違いない。でもそれは当たり前のことで、シャープの社員が立ち上がれるかどうかです。ここでグジグジ言っていたらもう終わりです」(経済ジャーナリスト・片山修氏)
 長年ぬるま湯に浸かってきた社員は、「鴻海流」についていけるのか。それがムリなら、廃業するしかない。
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鴻海の郭台銘氏。4月には「なるべく全員残ってもらいたい」と話していたが、3ヵ月もしないうちに一転した
PHOTO:加藤慶(郭氏) 共同通信社(天理工場)
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