マクラーレン報告書が暴いたロシア・ドーピング汚染の深い闇
2016.08.09
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リオ五輪熱狂のウラで…国家的悪事の実態がこれだ!
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リオ五輪出場が叶わず、涙ぐむイシンバエワ(34)。プーチン大統領に対して「無法行為から私たちを守ってほしい」と懇願した
 ロシアのドーピング疑惑はいまだ全貌の見えない底なし沼の様相を呈している。
 国際オリンピック委員会(IOC)はロシアのリオ五輪参加について、競技ごとの国際連盟に判断を委ねることを決定し、陸上、重量挙げなど100名以上のロシア人選手が出場不可能となった。
「今回のIOCの決定は非常に弱腰です。『もっとも腐敗したシステムを抱えた国でもオリンピックに出場できる』という、非常に残念なメッセージを世界中に発信してしまいました。ロシアは『ドーピング問題』が新聞のヘッドラインから早く消えてほしいと思っているのでしょうが、これから何ヵ月も何年もずっと付きまとうでしょう。マクラーレン教授の調査から、もっとたくさんの事実が出るはずです」
 こう話すのは、ロシアの組織的ドーピングを告発するドキュメンタリー番組を製作した、ドイツの公共放送ARDのハヨー・ゼッペルト記者だ。
 ゼッペルト氏の報道やロシアのドーピング検査機関元幹部の告白を受けて、世界反ドーピング機関(WADA)は’14年ソチ冬季五輪などの調査を開始した。
 一方、プーチン大統領は7月27日、陸上女子棒高跳びの女王エレーナ・イシンバエワらを前にして、
「ロシア選手へのキャンペーンは二重基準で、通常の範囲を超えている」
 と不満を表明した。
 だが、WADAが設立した第三者委員会のリチャード・マクラーレン氏がまとめた95ページにもおよぶ報告書を読めば、通常の範囲を超えているのはロシアのドーピング汚染だとわかるはずだ。

特製「カクテル」で薬物摂取
 通称「マクラーレン報告書」はロシアの国家ぐるみの不正がいかに巧妙だったかを白日のもとに晒した。
 報告書のなかで主に問題とされているのが、「尿のすり替え」だ。
 メダルが期待された37人の選手は、五輪前にきれいな尿を採取。ソチの検査所近くにあるロシア連邦保安局(FSB)の冷凍庫に保管していた。
 FSBの職員が下水道職員を装って人目につかない深夜に検査所に出入りし、陽性反応が出る可能性があるロシア人選手の尿を取り替えたという。
「検査所の部屋の壁に『ネズミが通れるほどの穴』を開けて尿の入った容器を隣の作業室に移し、そこできれいな尿と入れ替えられました。不正防止のため容器のフタは通常、開封できないようになっています。開封方法を見つけたFSBの職員はロシア・スポーツ省の次官から『マジシャン』と呼ばれていたそうで、報告書には『開けたことはたしかだが、どうやって開けたかは不明』とあります」(スポーツ紙記者)
 不正検査だけではない。検査機関のロドチェンコフ元所長は合成ステロイド3種とアルコールを調合した「カクテル」を開発したと証言している。
 摂取方法は独特で、選手はカクテルを口に含み、粘膜から吸収させてから吐き出す。こうすると飲んだり注射したりするよりも、薬物の検出可能期間を短縮できる。このカクテルは’12年のロンドン五輪前から使用されていたという。
 ドーピングに詳しいスポーツドクターの高橋正人氏が、報告書に記された方法について解説する。
「現在、薬物の検出方法そのものは非常に発達してきているので、むしろ原始的な隠蔽手法に先祖返りしているという印象です。古くからあるアナボリックステロイドの使用が中心なことにも驚きました。選手の尿検体が保管されているので、リオ五輪以降も違反者が出る可能性がある」
 五輪に出場した選手の過去の疑惑も再調査される可能性がある。
「今回、IOCは『処分が甘い』と批判されました。厳正な処分をしているというアピールのためにロンドン五輪、北京五輪と遡って調査することも考えられます。メダルの剝奪もあるかもしれない」(スポーツジャーナリストの生島淳氏)
 7月29日、マクラーレン氏はWADAを通じて声明を発表し、
「隠蔽によって恩恵を受けた選手をさらに特定することがわれわれの任務だ。調査は継続しており、数週間で作業計画を立てる」
 と真相究明に意欲を示した。長年封印されてきたスポーツ界のパンドラの箱が、ついに開かれつつある――。
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マクラーレン氏はカナダの法律家。報告書は五輪直前の7月18日に記者会見し公表した
PHOTO:アフロ
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