連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第14回 打者・大谷翔平、ボクならこう封じる
2016.08.20
LINEで送る

[singlemenu][ptitle]
image
打撃好調の今季はエースとして一番やクリンナップを任される真の二刀流選手に
 7月30日に札幌ドームで行われた日本ハム対ソフトバンク戦の試合前、久しぶりに大谷翔平(22)のフリー打撃を見ました。
 もともと速かったスイングスピードはさらに速くなり、身体をビルドアップした効果でパワーアップ。2球に1球はスタンドに放り込むような感じで、軽々と打球を飛ばしていました。驚いたことに、これは詰まったかなという当たりが、レフトスタンドに吸い込まれていく。これまで何度も大谷のフリー打撃を見ているはずのソフトバンクの選手も唸(うな)っていました。
 もし、自分が打者・大谷に投げるとしたら――途中から、そんなことを考えながら見ていました。今季ここまで打率.341、本塁打17本(記録は8月14日現在)。たしかに素晴らしい成績ですが、どんなボールにも対応できるわけではない。これまで見てきた中で、そんな打者はイチローさん、そして全盛期の松中信彦さんくらいでした。とはいえ、両サイド、高低、緩急を駆使する必要があるでしょう。
 カギとなるのは内角高め。大谷は腕が長いですから、外角は届きやすい反面、身体に近いところは窮屈になる。17本塁打のうち、レフト方向のホームランが10本あることから考えても、大谷が目線を真ん中より外よりに置いているのがわかります。
 となれば内角の直球、あるいは右投手のスライダーなど、大谷の懐(ふところ)に食い込んでいく変化球が有効になるはずです。内角へ意識づけさせることで、得意とする外角のボールが実際よりも遠く感じるからです。
 ボクの場合、決め球に使いやすいフォークを持っているので、内角だけでなく高目も意識させたい。それも見せるだけではなく、スイングさせる。バットを振ることで、打者の目線はより上にあがるからです。
 最初の打席は内角高めで打ち取るのがベター。1打席目で“餌(えさ)まき”がうまくいけば、2打席目以降はどれだけ大谷が内角を意識しているかを見極めて配球を決めます。ファウルのときのタイミングが合っているのか、遅れているのかを見て、内角攻めを続けるのか、外の真っ直ぐ、フォークを使うのかなどを決めるわけです。
 ただし――全打席抑えようとは考えません。打率3割超ということは、3打数あれば1回はヒットを打つということ。大事なのは、その1本をどこで打たせるか。走者がいない場面なら二塁打、三塁打でもOKというくらいの気持ちで臨みます。
 打たれてはダメ、こうしてはダメなど、「ダメ」が多いと脳が疲れます。脳が疲れると良いアイディアも浮かびませんし、身体もイメージ通りに動かない。経験上、「点差があるときは押し出し四球はOK」など、「OK」を増やすほうが、脳がリラックスし、抑えることができました。
 リラックスできる環境をいかに自分で作り出せるか。それが大谷のような強打者封じには必要不可欠なのです。
image
さいとう・かずみ/’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率.775。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
LINEで送る