愛甲猛 いまだから話せる選手のカネとSEX 2
2016.09.26
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意外と細かくて大変!? 野球選手の
カネにまつわるエトセトラ
選手の待遇って、球団によって全然違うんですよね。ロッテや中日は厳しかったですか?

ロッテって面白かったんですよ。12球団で唯一、遠征以外にも交通費が出ていた。自宅から球場まで、最寄り駅までのバスも含めて「1ヵ月でいくら」と申請する。僕はバスを使わないけど、使うことにして申請してね(笑)。

発想がバイトの学生じゃないですか(笑)。

当時の球団社長の松井静郎さんは国税局出身で、ものすごくおカネにキッチリした方だったんです。年俸1000万円以下の選手は、球団がまとめて確定申告してくれた。で、多少の還付金が返ってくる。でも高卒の選手なんか、税金や国民健康保険を払わなきゃいけないことも知らないから、還付金をすぐ使っちゃう。保険の請求が来て大騒ぎするんですよね(笑)。

わりと親近感が湧(わ)いてきますね(笑)。

当時、球団支給の用具代は年間3万5000円でした。バットなんか1〜2本しか買えないし、ミットも買えない。スパイク支給もたった3足なので、キャンプで履(は)き潰(つぶ)しちゃいます。僕はあるメーカーとアドバイザリー契約をしていて用具を支給されていたからよかったのですが、二軍選手は皆、先輩からのお下がりを貰いに来ていましたよ。

いまはもう、ほとんど用具は支給ですよね。

そういう環境を作ったのがナイキなんです。ナイキがバラ撒(ま)いたから、ミズノが泡食っていろいろやり出した。一軍と二軍の格差がなくなると向上心の低下につながるので、いいことばかりではないですね。たとえばロッテのころ、試合に勝つと一番活躍した選手を監督が選んで「監督賞」を出していた。一軍は一万円前後の現金でしたが、二軍なんかメリットのシャンプーとかリンスでしたからね(笑)。

リンスて! 『ごきげんよう』の今日の当たり目じゃないんだから(笑)。

しかもそれは、一軍の選手が試合で貰った「二塁打賞」がロッカーに置きっ放しにされているのを貰って来たもの(笑)。本当におカネがなかったんです。試合球もキレイな球なんか一球たりともなくて、一軍のお下がりの汚いものを使っていた。その日に登板のない先発投手がベンチ横で一所懸命消しゴムをかけてキレイにして、審判のところに持っていくんです。

そのころと比較すると、いまは格段に恵まれていますね。

ロッテに入団したころ等々力(川崎市)にあった二軍球場はクラブハウスも掘っ立て小屋でしたし、室内練習場は元鶏舎ですから。高沢秀昭さん(遊撃手・外野手)が、そこで野良猫に餌付けしていたりした(笑)。

えらい牧歌的な話ですね(笑)。

高沢さんは首位打者も獲られた一流選手ですが、面白い方なんですよ。当時は川崎球場の試合が雨天中止になると、球場で売れなかったお弁当を駅前にて半額で販売していたんです。高沢さんはそれを必ず2個買って帰って、自分で食べるんです(笑)。先輩に「プロ野球選手なんだから、もっといいもの食え!」って、よく怒られていました。

それがささやかな幸せなんですね(笑)

あと、外国人選手の待遇に関する契約内容は想像以上に細かいですよ。滞在する家や遠征で泊まる部屋のランクはもちろん、家の中のものはお皿からスプーン、フォークまですべて本人の希望通りのものがレンタルされる。

身一つで来ても全然OKですね。

ディアズなんて単身赴任なのに、バカじゃないかってくらい広い家に住んでいましたよ(笑)。横浜の一軒家で、おそらく200㎡くらいあったんじゃないかな。

愛甲さんはディアズやデストラーデとよく遊びに行かれたそうですね。

彼らが女の子をナンパするときの通訳代わりだったね(笑)。いまでいうクラブのような場所に行くことが多かったかな。昔はそういう店でプロ野球選手がVIPルームに入ると、黒服が客席から踊っているお客さんを見繕って連れて来てくれた。「プロ野球選手の○○がいるから、一緒に飲まない?」って。

そりゃ楽でいいですね(笑)。昔のプロ野球選手は、得することが多かったんですかね。

昔はとくにそうだったと思うけれど、給料が上がれば上がるほど、モノがタダになっていくんです。飲食店でも「来てくれただけで嬉しいです」って言われて、払わせてもらえなかったりする。逆に給料が安ければ安いほど、おカネを出さなきゃいけない。不思議な話ですよね。


球団に残れる人と残れない人
想像以上に「情実」が働いている!?
たとえば同じような実績を残したとして、引退後に指導者として残れる選手と残れない選手は、どこで決まるんでしょうか?

選手時代の日々の根回しがモノを言うパターンも多いですよ。たとえば中日時代、周囲の立浪和義に対しての扱いは別格だった。立浪自身はすごくいい奴だし、いい選手なんだけど、誰もが「いつか監督になるだろう」と思っていたから、先輩や若手コーチも裏方も、すごく気を遣っていた。僕が用具係に「帽子をください」とお願いするとブツブツ言われるんだけど、立浪が言うと黙って4つくらい渡していたり(笑)。中日の生え抜き選手たちのなかでも、とくに山本昌広、立浪、今中慎二、中村武志の4人は別格だった。ちなみに生え抜きの中でもちょっと扱いが悪かったのは、大豊泰昭と山崎武司。山崎なんかもう、愚痴ばっかり言っていたね(笑)。いま、別のチームでコーチをしているある人なんか立浪への媚(こび)の売り方がすごかった。立浪がちょっとケガしたら、大袈裟(おおげさ)に「大丈夫か!?」って駆け寄って行くんです。しかし、立浪は、オーナーから交友関係を問題視され、まだ監督にはなれてないな。ほかにもロッテ時代は、毎週日曜日に球団社長の家に庭掃除しに行く選手もいましたね。

もう、悪い意味の「サラリーマン」じゃないですか(笑)。いずれにせよ選手時代の関係性が、将来の職探しにつながっていると。

引退した選手は皆、「(仲の良かった)○○が監督になるらしいぞ!」と知ったら、すぐに電話しますからね。


地方球場、ヤジ、審判の好き嫌い……
"あのころのプロ野球"裏あるある
昔は観客が少なかったし、ヤジもよく聞こえましたよ。川崎球場は汚かったから、近鉄の応援団の人がいきなり「愛甲ちゃ〜ん、ゴキブリおるで〜」とか教えてくれたりね(笑)。

「報告されても……」って感じですよね(笑)。ほかに印象に残っているヤジは?

とくに覚えているのが、中日時代のヤジ。あるとき大豊の調子がすごく悪くて、星野仙一監督がもうカリカリしていたんです。そんなときに大豊が三振して帰ってきて、バックネット裏から「給料もらい過ぎじゃ! この給料泥棒!」ってヤジが聞こえてきた。大豊もすぐカッとなるから、言い返そうとしたんです。でもすぐ星野さんがベンチから「その通りじゃ!」って叫んじゃった(笑)。僕らはベンチで下を向きながら、笑いをこらえるのに必死でした(笑)。

言い返してくれるかと思ったら、ヤジにまさかの同調(笑)。

ヤジに愛嬌があるのは、やっぱり阪神ファンです。周りを意識しながらヤジを飛ばすので、必ずどこかでオチを付けようとしている。

たとえばどんな感じですか?

ある日の阪神戦、第一打席で「おいコラ愛甲、お前、打ったら承知せんぞ!」と観客席から怒鳴られたんです。でもその日の僕は調子が良くて、第一打席から第三打席まで連続でヒットを打った。そのたびに「打つな言うたやろ!」と聞こえてきたのですが、第四打席のネクストに入ったら「愛甲ちゃん、頼むから打たんといてくれ〜」と懇願し始めるんですよ(笑)。

憎めないですね〜(笑)。

面白いのが、関西の人はファールフライを捕りに行くと、必ず足元を指差して「愛甲ちゃん、ヘビ、ヘビ!」って言うんですよね。

小学生か!(笑)

あと、地方球場で試合前に、若い選手がベンチ前で素振りしていますよね。あれ、観客席の女の子のパンツをチェックしてるんです。

へ? どういうことですか?

地方球場って椅子の角度の問題なのかわかりませんが、よく観客席の女の子のパンツが見えるんです。で、まずは若い選手が素振りするフリして、どの席のパンツが見えるかチェックする。そして「手前から5番目の青いシャツの子、見えますよ」という報告を受けた後で、僕らベテランがのっそり出てくる。

やっぱりバットを振るフリをして、パンツを見に行くわけですね(笑)。

また、昔のパ・リーグは、審判を上手く利用している選手が大勢いましたね。とくに落合さんは審判に好かれていて、すごく上手に利用していた。僕も落合さんにはすごくお世話になっていて、その姿をよく見ていたのでわりと審判に好かれていたと思います。審判も人間なので好き嫌いがハッキリしていた。大石(大二郎)さんは審判に上から目線だったので、すごく嫌われていました。僕と仲がよかったある審判は「愛甲さん、俺、ホントにアイツ嫌いなんですよ」って言って「少々セーフでもアウトにしたる」みたいなこともありましたね。実際にどこまでやっていたかはわかりませんが(笑)。

えらいユルい感じですね(笑)。

デーゲームで一塁塁審が「おい、タケシ。早くビール飲ませ!」とか言ってきたり。試合が長いと文句ばっかり言うんですよね(笑)。

とくに今年はコリジョンルールの影響もあり、判定を巡るトラブルが多発しています。愛甲さんはどうご覧になっていますか?

いまの審判は、あまり上手じゃないですよね。昔は審判個々にストライクゾーンのクセがあったりはしましたが、ブレはなかった。いまは同じ審判でもゾーンがブレている。ひどいときには、同じ試合の中でも判定がブレていたりします。これは投手にしても打者にしても、かなりやりづらいですよね。

なぜそんなことが起きるんでしょうか。

昔の審判はプロ野球OBが多かったんですが、いまは一般からの採用が増えている。プロのスピードや変化球対応の経験値が低いんだろうなと思います。

どうすればいいんですかね。

ひとつ、すぐに直せるところがあります。いまの審判は、抗議に対してすぐに不安げな表情になる。昔の審判の方は、自分が間違っていると思っても絶対に折れませんでしたからね。自分でミスだと思っても、試合中は「何のことだ?」って顔をしていた(笑)。それくらいの図太さが必要なんですよ。

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大豊への「給料泥棒!」というヤジに、星野監督がまさかの同調!? ちなみに星野さんは自分がヤジられたときは、ヤジった人を球場から追い出したこともあるとか
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愛甲猛●横浜高校のエースとして1980年、夏の甲子園に優勝。ドラフト1位でロッテ入団。4年目より野手に転向し、強打の一塁手としてレギュラーに定着。中日移籍後は代打の切り札として活躍。ニコニコ生放送にて全国高校野球選手権大会の全試合解説中
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カネシゲタカシ●漫画家、コラムニスト。『週刊アサヒ芸能』や『スポーツナビ』などにプロ野球をテーマとした連載を持つ。近著に『みんなのあるあるプロ野球GOGO!』。『野球大喜利 ザ・レジェンド~こんなプロ野球はイヤだ4~』(徳間書店)は8/12(金)発売。
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