連載 斉藤和巳の「エース脳」マウンドから見たドラマの裏側 第25回 理想のキャッチャーとは?
2016.11.12
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守護神・サファテと抱擁するソフトバンク・細川。打者心理を読んだ老獪なリードにも定評あり
 来年3月に開催される第4回WBCを睨(にら)んだ日本代表の強化試合が、11月10日から13日まで4試合行われます。代表の投手にとって難しいのが、他球団の捕手とバッテリーを組むことです。
 そもそも、投手は捕手に何を求めるか?
 僕の場合、それはキャッチングの巧さでした。真っ直ぐであろうが、変化球であろうが捕球の際にミットが動いてしまうと、際どい球はボールと取られます。投手にとって「気持ち良くマウンドで投げられる」ことは、皆さんの想像以上にピッチングに影響するのです。古田敦也さんは巧くて、コースギリギリのボールを、ミットは動かさずに身体を少しだけ動かして捕る。すると審判はストライクとコールする――そんな場面が何度もありました。現役ではソフトバンクを退団した細川亨が巧い。東西対抗戦で当時、西武にいた細川と組んだことがあるのですが、こちらの呼吸に合わせてミットを構えてくれる。1球投げただけで「巧いな」と思いましたね。まだまだやれる捕手です。落ちる球を使う投手にとって、ワンバウンドしたボールを後ろに逸(そ)らさない技術も重要です。思い切って腕が振れないと、いいボールは投げられません。
 野村克也さんのように肩の強さを重視する方もいます。もちろん、盗塁を刺せれば助かりますが、そこは投手と捕手の共同作業ですし、一番ではない。極端な話、ランナーを帰さなければいいわけですから。
 もう一つ、僕が大切だと思うのがコミュニケーション能力です。
 ずっとバッテリーを組ませてもらった城島健司さんには若いころ、よく食事に連れて行ってもらいました。城島さんは、若い投手が一軍に上がってくると、そういう場を設けて性格を把握したり、自分の感じたことを伝えたりしていました。会社員の方も上司と話すとき、会社で言われるのと、飲みに行って話をするのとでは違いますよね。そういう時間を使える方でした。
 いろいろなことを教わりましたが、僕が大きく変わるキッカケとなったのは’02年ごろ、春季キャンプで言われた、
「フォークをインサイド、アウトサイドに投げ分けられるか? ほかの変化球をうまく操れんかったとき、フォークを内、外、投げられれば幅も広がるし、打者も対応が難しいから練習してみろ」
 というアドバイス。それまで「フォークはベース板の上に落とせばいい」と考えていたので、面白いなと思って次の日から早速、取り組みました。「落としたい」から「コントロールしたい」に意識を変え、人差し指と中指の握りも浅くするなど工夫したことが、’03年の20勝につながりました。
 日本代表に選出される捕手は当然、高い捕球技術を持っていると思います。あとは限られた時間の中で、どれだけコミュニケーションを図れるか。それがV奪回のために、必要不可欠だと思います。
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さいとう・かずみ/’77年京都府生まれ。プロ通算79勝23敗、勝率.775。右肩の故障に泣かされながらも「負けないピッチング」で沢村賞を2度受賞。太く短く生きたホークス伝説のエース
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