宮﨑駿監督の創作魂に火をつけたドワンゴ川上会長「失言のその後」
2016.11.25
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NHKスペシャルでカットされてた部分はもっと恐かった
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ドワンゴでは会長職だがジブリでは「プロデューサー見習い」中の川上氏。電車通勤らしく駅から徒歩でやってきた
「生命に対する侮辱を感じます」
 11月13日に放映されたNHKスペシャル『終わらない人 宮﨑駿』。スタジオジブリの宮﨑監督(75)は強い口調で、ある映像を非難した。それは、テレビの前の視聴者ですら居住まいを正すような怒りの声だった。
 放送は、’13年9月に長編作品からの引退宣言をした宮﨑氏を2年間追い続けたドキュメンタリー。手描きにこだわっていた宮﨑氏がCGによる作画に挑戦し、悪戦苦闘する様子を描いたものだった。
 その中で"プロデューサー見習い"としてジブリで働いている川上量生(のぶお)ドワンゴ会長(48)が、宮﨑氏に人工知能(AI)を使ったCGをプレゼンするシーンが出てくる。冒頭の事件はここで起こった。
「(AIに)速く移動するって学習させたやつなんですね。痛覚とかないし、頭が大事という概念がないんで頭を足のように使って移動している。この動きが気持ち悪いんでゾンビゲームに使えるんじゃないかって」
 川上氏のこのプレゼンを聞いた宮﨑氏は、自身に身体障碍者の友人がいることを明かしつつ感想を述べた。
「これを作る人たちは痛みとかそういうものについて何も考えないでやっているでしょう。極めて不愉快ですよね」
 川上氏は動揺し、取り繕ったものの場は静まり返ったまま。この放送直後から、ネットが炎上。宮﨑氏を賞賛する声、また川上氏に同情する声などが飛び交った。
 川上氏は京大工学部を卒業後、ニコニコ動画という新たな動画共有サービスを開発した、いわば「理系脳」の代表格。そんな彼が、手作りにこだわり「人間賛歌」をテーマに作品を生み出してきた「文系脳」のジブリに入ったことに違和感を感じる人も多い。今回の炎上について川上氏を直撃した。
「予想以上(の怒り)でしたね。テレビではカットされてましたが、あの後、さらに激怒されたんです(笑)。僕はただ人工知能にできることを伝えたかっただけなんです。でも、エンジニアは絵が描けない。やむをえずフリー素材(の画像)を使って仕上げるんですが、残念ながらネットに無料で転がっているものはほとんどが人間(の形をしたもの)なんです。結果、動きがゾンビっぽくなってしまうんです」(川上氏)
 川上氏についてプロデューサーの鈴木敏夫氏はこうフォローする。
「彼は頭が良すぎるんですよ。だから前段を飛ばして結論だけを言っちゃうことがよくある。あの時もそうでした。でも宮さん(宮﨑氏)の良いところは、怒ってもすぐケロっとしちゃうところ。(激怒の)翌日も川上さんと普段通り話してましたし」
 鈴木氏は、『風の谷のナウシカ』の映画化を成功させて以降、宮﨑氏の右腕としてジブリを牽引してきた人物。彼はこう続けた。
「いまはあらゆる意味でジブリも過渡期なんですよね。そういう時、僕は無理に動かない。で、いまは僕と川上さんと宮さんで日がな一日雑談をしているんです。そこで不思議と新しいものが生まれるんですよ」
 引退宣言後も新しい風を受け、宮﨑氏が歩き続けているのは間違いないようだ。「新作は未定」(鈴木氏)とのことだが、名監督からまた、目が離せなくなった。
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『紅の豚』の制作と並行して宮﨑氏が完成予想図を描き、建築会社と打ち合わせをして完成させた社屋。ジブリファンの聖地だ
PHOTO:小松寛之
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