社員大量退職 朝日新聞「これからは不動産で稼ぐ」
2016.12.05
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大阪・中之島、銀座に相次いでコンラッド、ハイアットが開業
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左の「フェスティバルタワー」低層階に朝日新聞大阪本社が入居。新築のウエストにはホテルのほか美術館も入る予定
 大阪のビジネスの中心・中之島にそびえる37階建ての「中之島フェスティバルタワー」。音楽ホールやオフィス、レストランなどが入る大阪の新しい「顔」として、’12年に開業した。
 このビルから四ツ橋筋をはさんで西側に、ほぼ同じ高さの超高層ビルがまもなく竣工する。二つのビルを所有するのは朝日新聞社で、入居するテナントの「大家」として賃貸収入を見込む。
〈この5年間は、成長へのラストチャンスだと考えます。失敗すれば、未来はない〉〈中之島フェスティバルシティと銀座朝日ビルが安定稼働する’20年度に、単体の不動産事業で収入200億円、営業利益率30%を達成し、収益の柱とします〉
 朝日新聞の渡辺雅隆社長(57)は今年の年頭挨拶でこう訓示し、不動産事業に社の未来を懸けていることを明かした。
「来春完成するフェスティバルタワー・ウエストには、ヒルトンホテルグループの最上級ブランド・コンラッド大阪が入居します。すでに運営会社を設立、人員の募集もしている。ビルの最上部、33階から40階に入居し、全室50㎡以上で、一室あたりの料金は4万〜5万円以上になる見込みです」(経済誌記者)
 朝日がホテルの大家になるのはここだけではない。東京・銀座の「銀座朝日ビル」も来年秋に改築し、日本初上陸の「ハイアット・セントリック」が入る予定だ。
「ハイアット系のなかでもニューヨークやパリなど、大都市の最も利便性の高い地域に開業するコンセプトのホテルで、中国人富裕層などの観光・ビジネス需要を狙っている。銀座の中心にはあまり高級ホテルがなく、そういう点でも集客が見込めます」(ホテル経営者)
 この場所はかつて朝日の東京本社があり、文豪・夏目漱石や石川啄木が朝日在社時に机を置いたという。現在は高級クラブやブランドショップが並ぶ並木通り沿いの超一等地で、ホテルは12階建てのビルの3階〜12階を占める予定。
 朝日新聞が東京、大阪で高級ホテルの「家主」になるのは、本業の苦境を反映している。単体の売上高は’15年3月期に29年ぶりに3000億円を割り込んだあとも下げ止まらず、’16年3月期には2748億円まで落ち込んだ。
「OBの集まりでも、『不動産で食っていくって、情けないねえ。何のためにオレたちは新聞記者をやっていたんだろう。朝日不動産に看板を替えればいい』と自嘲する人もいましたよ」(『ブンヤ暮らし三十六年 回想の朝日新聞』著者で元朝日新聞記者の永栄潔氏)
 人件費を減らすため、今年は2度にわたって早期退職者を募集した。実際に退職した社員が明かす。
「3月末、8月末で退職する社員を募集し、合計で100人ほど辞めたと聞いています。40歳以上の社員が対象で、割増退職金として退職時の年収の4割を、定年までの残り年数分もらえる。ただし、上限は5000万円です。『どうする?』とひそひそささやき合っていた社員がいました。退職金で一気に住宅ローンを返済し、少々年収が下がっても転職して残りの人生を悠々と暮らす、という選択をした人もいます」
 先日、Yahoo!のニュース部門が中途採用の募集をしたところ、朝日新聞社員から大量の応募があったという。
 東京電力福島第一原発事故の、いわゆる「吉田調書」をスクープ、その後誤報とされたM記者、K記者をはじめ、原発事故後の福島の現状をレポートした連載『プロメテウスの罠』を担当した女性記者、大阪本社の中堅記者なども続々と退職したという。
「いまは朝日というと『なんだ、エラそうに』と反発を買う。新聞もテレビも見ない世代が増えて、経営陣は生き残りに必死なんだと思う。不動産をうまく活用して立ち直って、世の中で起きていることを伝えるという本来の役割を果たしてもらいたいですね」(前出・永栄氏)
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渡辺社長は大阪本社の編集局長も経験
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まもなく完成するフェスティバルタワー・ウエストには、コンラッドの文字が。
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銀座で来秋竣工する銀座朝日ビル
PHOTO:加藤 慶 小松寛之 共同通信社
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