メガネ万引き犯ネット公開を続けた「社長の執念」
2017.02.18
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抗議の電話を受けてもホームページから削除せず
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本誌の取材に答える「めがねお〜」運営会社社長の張谷氏。ホームページの更新も自らの手で進めてきた
「3日間、悩みに悩んだ末に、ホームページに防犯カメラの画像を載せるという決断をしたんです。覚悟を決めた以上、何の成果もないまま掲載を止めるつもりはありませんでした」
 こう語るのは、東京都内でメガネ販売店3店舗を経営する張谷満氏。2月4日、「めがねお〜御徒町店」では、メガネフレーム7本、約21万円相当の商品が万引きされる被害に遭った。張谷氏はその3日後、顔をモザイク処理した万引き犯の写真を同店のホームページ上で公開。「3月1日にはモザイク無しの顔写真・映像がUPされます」という警告文とともに、犯人に対して商品の返却、もしくは弁償するように呼びかけたのだ。
「防犯カメラの映像もあるので、店長が被害届を提出に行きました。でも警察からは『品物を持って店から出たところが映っていないと、万引きで持ち出したとは判断できない』と言われ、店長は落ち込んで戻ってきたんです。その後も警察が動く気配はなく、自分でアクションを起こさないと何も起きないと感じました。それで思い出したのが、『まんだらけ』の事件だったんです」(張谷氏)
 その事件とは、’14年に東京・中野にある漫画やグッズを扱う中古ショップ「まんだらけ」が、万引き犯の写真を公開するとネットで告知し騒動になったもの。その是非が問われ最終的に店側は公開を中止したが、犯行から15日後に犯人が逮捕された。
「弁護士にも相談し、名誉毀損や犯人への脅迫罪の可能性があることは認識していました。私だって罪に問われたくはない。ただ、汗水流して働いてくれている社員たちもいる。彼らのことを考え、商品が返ってくるにはどうしたらいいか考え抜いて、ネットでの公開を決断したんです」(張谷氏)

電話対応もすべて自分で
 ネット公開の翌日から多くのメディアがこの件を報じ、サーバーがダウンするほど店のホームページにはアクセスが殺到した。
「店にかかってくる電話は転送してもらい、すべて私が対応しました。店員が代わりに答えたら、その言葉に私が責任を取れませんから。電話の9割は、ネット公開に賛同していただく内容でした。中には『おまえのやっていることは私刑だ』というお叱りの言葉もありましたが、丁寧に私の意図をご説明したつもりです」(張谷氏)
 夜中に電話が鳴ることもあり、一日3時間ほどしか寝られない日々が1週間ほど続いたという。被害届の提出後、一切連絡がなかった警察は、この騒動でようやくコンタクトを取ってきた。
「例外はあるかもしれませんが、警察は万引きの捜査にはなかなか動きません。万引き犯を逮捕しても、警察内部での評価はとても低いからです。凶悪犯の逮捕を100点とすると、引ったくりで50点、万引きだと1点もあればという程度。20万円くらいの被害だと、せいぜい『万引き防止のブザーをつけなさい』とアドバイスするくらいでしょう。これでは、小規模の店舗は自己防衛するしかありません。警察はもっと力を入れて捜査を行わなくては、市民からの信頼を失っていきます」(元兵庫県警刑事・飛松五男氏)
 ネット公開で警察も重い腰を上げたのか、東京・北区にあるメガネ店で56万円相当の商品を盗んだとして、2月13日に白川雄貴(かずき)容疑者(23)が逮捕された。
「身体的な特徴や盗みの手口が、御徒町の防犯カメラの映像と酷似しています。かつて自分のメガネを売った際に高価で買い取ってもらったことから、犯行を思い付いたようです。『ほかにもメガネを万引きした』と供述しており、御徒町の件を自供するのも時間の問題でしょう」(全国紙警視庁担当記者)
 この逮捕を受けて、張谷氏はホームページに上げていた映像を削除し、捜査関係者や社員に対する感謝の言葉を掲載した。警察に期待できなければ、ネットの力を使う。こうした動きは誰も止められないのだろう。
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「めがねお〜」の防犯カメラに映っていた万引き犯(中央)。混雑した時間帯を狙って犯行に及んでいる
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北区での窃盗容疑で逮捕された白川容疑者。「めがねお〜」の万引き犯と顔立ちや髪形、体型が酷似している
PHOTO:濱﨑慎治(張谷氏)、蓮尾真司(白川容疑者)
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