年間1086杯を食すラーメン賢者が推す絶品9杯

「原点回帰」がキーワードのラーメン界

「安くて美味しくてお腹いっぱいになれて幸せを感じる。これがラーメンの原点だと思うんです」。全国の名店・新店を食べ歩いてきた評論家・山内直人氏が、懐かしさと新しさが融合した「いま食べるべき王道のラーメン」を一挙紹介!


監修・山内直人


醬油 手打中華そば一番いちばん
「特中華そば(950円)」

年間1086杯を食すラーメン賢者が推す絶品9杯

客席から見える寸胴鍋の中には、肉、魚介が大量に入っている。スープは重厚な出汁の旨みとキレがある醬油の香りがダイレクトに伝わるもので、古くからある醬油ラーメンの味を極限のレベルまで高めている。国産小麦をブレンドした手打ち麵も秀逸。都内では珍しく製麵機は使用せず、麵棒や青竹を使ってすべて手作業で打ったもの。これを丁寧に手もみをしてから茹でている。口に入れると国産小麦ならではの豊かな香りが広がり、喉越しも滑らか。燻製されたチャーシューや注文後に包むワンタンなど、トッピングもすべて手作り。もはや首都圏にあるラーメン店の重鎮と称してもいい名店だ。


住所:東京都町田市中町1-28-24 大成ビル1F

TEL:―

営業時間:12:00~14:30(LO)、18:00~20:30(LO ※材料がなくなり次第終了)

定休:水曜

交通:小田急線町田駅から徒歩約10分


昭和や’90年代の味が見直されている


 2010年代に入ってから、超個性的なラーメンが脚光を浴びてきました。野菜をポタージュ状にした「ベジポタ」ラーメン、貝系をふんだんに使った「シェルラー」と呼ばれるラーメン、甲殻類を使ったラーメン、果物を使ったラーメンなどです。オシャレな内装の店内で、高級食材を使いフレンチやイタリアンの技法を取り入れたりしたラーメンは、多くの女性客も呼び込みブームとなりました。

 しかし、2015年の後半あたりから、そうした流れは落ち着き、実験的なお店は1年に数店舗しか出てこなくなりました。いまは、昭和や’90年代に流行っていた「原点」の味に立ち返る店が増えてきているんです。

 首都圏では、中野の「青葉」の流れを感じさせる店が増えてきたという印象があります。「青葉」は’90年代に「豚骨魚介」のWスープを流行させました。その影響力はいまでも大きく、「動物系」と「魚介系」の出汁を何の具材でとって、どんな割合でブレンドするのか。これが職人の腕の見せ所になります。

 そのほかに、昔懐かしいシンプルな「醬油」や「塩」で勝負するお店が目を引きます。

 お薦めしている9店に共通しているのは、サラリーマンのランチのイメージ。働き盛りの男性がスーツの上着を片手に爪楊枝をくわえて、満足気な笑顔で出てくる感じの店です。僕はそういう店のラーメンこそが王道だと思うんです。


醬油 らーめん いろはや
「らーめん(680円)+青菜(50円)」

年間1086杯を食すラーメン賢者が推す絶品9杯

昨年4月にオープン。「らーめん」は、並(150g)・大(250g)が同一価格で680円と、財布にやさしい値段設定。古き良き昭和の醬油ラーメンそのままに、鶏ガラをベースにしたスープは、さっぱりした口当たりながら、コク深い出汁の味わいが口のなかに広がる。麵は自家製でしなやかな食感のストレート麵。チャーシューは豚のバラロールとモモ肉2種類の組み合わせ。奇をてらった素材は使用せず、ひたすら愚直に作り上げられていて、風格すら感じさせる一杯。こんなに魅力的な"普通の醬油ラーメン"にはなかなか出会えない。


住所:東京都杉並区阿佐ヶ谷北6-13-1

TEL:―

営業時間:11:30~14:00、18:00~21:00頃

定休:水曜

交通:JR阿佐ヶ谷駅から徒歩約10分


醬油 BASSO ドリルマン
「中華そば 中盛り(茹で前250g)(800円)」

年間1086杯を食すラーメン賢者が推す絶品9杯

都内でもトップクラスといわれる自家製麵の旨さは圧巻。この店だけのために福岡県で作られたオリジナルの超高級小麦粉を中心に、秋田県産の小麦粉などをブレンド。しっかりと茹でられた麵は、喉越しが抜群で食感もしっとりとしている。カエシは店主の故郷・秋田県にある石孫本店の丸大豆天然醸造醬油「百寿」がメイン。最上の香りと味を持つ醬油に、何層にも感じられる旨みとコクを兼ね備えたスープが重なり合う。かつて醬油ラーメンに当たり前のように使われていたラードを使うのも、「懐かしさ」を感じさせる要因のひとつか。目の前で炙る炭火焼きのチャーシューも絶品。


住所:東京都豊島区西池袋2-9-7

TEL:03-3981-5011

営業時間:11:30~15:30、18:00~21:00

定休:月曜(祝日の場合は翌日)

交通:JR池袋駅もしくはJR目白駅から徒歩約10分


豚骨魚介 麺 髙はし
「乱切りちゃあしゅう麺(800円)+醤油玉子(味玉)(80円)」

年間1086杯を食すラーメン賢者が推す絶品9杯

個人的に昨年最も通ったお店です。なかでも一番食べたメニューがこの「乱切りちゃあしゅう麺」。丼に並々注がれた素材の旨みたっぷりなスープは、2000年に創業してからずっと継ぎ足されてきたもの。動物系はじっくりと骨が溶けるまで炊き込まれ、そこに魚介の豊かな香りと味わいがずっしり効いている。ほんのりと甘みもある濃厚なスープだ。コシのある中太麵は210gと食べ応え抜群。この「乱切りちゃあしゅう麺」に入るのは、オーブンで丁寧に焼きあげた肩ロースのチャーシューを分厚く乱切りにしたもの。心も身体も満たされる一杯だ。


住所:東京都北区赤羽1-38-10 内山ビル1F

TEL:03-3903-1575

営業時間:11:00〜13:20頃、17:20〜18:20頃(土・祝は10:40〜13:00頃)

定休:日曜

交通:JR赤羽駅から徒歩約5分


豚骨魚介 製麺rabo
「らーめん(700円)+味付玉子(100円)」

年間1086杯を食すラーメン賢者が推す絶品9杯

店内が薄暗いのは、かつてスナックだった内装を居抜きで使用しているため。「内装にこだわりなんかないですよ(苦笑)。気軽に食べてもらうのが一番」という店主だが、その腕は天才的。スープはカツオやサバ、煮干しといった昔ながらの「和出汁」と豚・鶏の動物系をブレンド。濃厚な魚出汁の旨みが最大限に引き出されている。自家製の細めのうどんのような白いストレート麵も、小麦の香りが広がり、ラーメンマニアたちからの評価も高い。化学調味料を一切使わず、手間暇を掛けて食材の味を最大限に引き出すことでしか実現できない本物の一杯だ。


住所:東京都渋谷区本町4-13-10

TEL:03-6383-3657

営業時間:【月~金】11:30~14:30、18:00~21:30【土】11:30~14:30

定休:日曜(営業する場合もあり。要電話確認)

交通:都営大江戸線西新宿五丁目駅から徒歩約5分


塩 ぜんや
「ぜんやラーメン(750円)」

年間1086杯を食すラーメン賢者が推す絶品9杯

1999年に創業以来、ごまかしの効かない塩ラーメン1本で勝負。スープは琥珀色と黄金色の中間のような何とも言えぬ麗しい色合い。ダイナミックな出汁感がありながら繊細で、各々の素材が高いレベルで調和している。中太の縮れ麵がこのスープによく絡む。昭和から塩ラーメンは存在するが、首都圏に現在多数ある塩の「原点」はこの店。その味わいはいまも日々輝きを増し続けている。


住所:埼玉県新座市野火止4-10-5 

TEL:048-479-6664

営業時間:11:30~スープが無くなり次第終了(14:00~14:30頃)

定休:火曜、水曜

交通:JR新座駅から徒歩約12分


塩 函館塩ラーメン 五稜郭
「ラーメン(750円)」

年間1086杯を食すラーメン賢者が推す絶品9杯

戦後の時代から、函館のラーメンと言えば美しく澄みきった「塩」。豚がメインの動物清湯スープに、函館近郊でとれる最上級品昆布「道南産 真昆布」、干し椎茸、貝柱などから抽出した塩ダレで味と旨みをプラス。まろやかでコクがあり、最後の一滴まで飲み干せる。スープによく馴染む麵は、函館・出口製麺から取り寄せる北海道産小麦100%の細ストレート。これほどの一杯は函館でも出会えない。


住所:東京都杉並区天沼3丁目28-7 

TEL:03-6364-0649

営業時間:【平日】11:30~15:00、18:00~21:00【土日祝】11:30~19:00

定休:月曜、火曜(祝日の場合、営業)

交通:JR荻窪駅から徒歩5分


豚骨 博多長浜らーめん もりや
「らーめん(650円)」

年間1086杯を食すラーメン賢者が推す絶品9杯

いま、首都圏に多い豚骨ラーメンは、豚骨自体の厚みが強くて、醬油もビシッと効いているようなものが主流。本場・博多ではもっとさっぱりしていて、口当たりがマイルドな店が多い。この「もりや」はそうした原点の味を愚直に追求している。麵は福岡の実力派製麵所「トリオ製麺」から取り寄せているしなやかな極細ストレート。"首都圏最高峰レベル"の博多長浜系豚骨、ここにあり。


住所:千葉県松戸市常盤平陣屋前9-15 

TEL:047-389-9770

営業時間:11:30~14:20、17:30~23:30【日・祝】11:30~14:20、17:00~21:45

定休:月曜

交通:JR新八柱駅から徒歩約3分


つけ麺 自家製麺 くをん
「つけめん 並 345g(700円)+味玉子(100円)」

年間1086杯を食すラーメン賢者が推す絶品9杯

自家製麵はうどんのような超極太タイプ。表面が艶やかでモチモチした食感。嚙めば嚙むほど小麦の香りが口いっぱいに広がる。つけ汁は、会津地鶏や川俣シャモ、比内地鶏といった東北が誇る鶏を贅沢に使用した動物系に、煮干しやアジや節類を加えたもの。甘くてピリ辛でしょっぱくて、味がはっきりしている。このメリハリがつけ麵の原点なのだ。麵好きなら、福島まで足を運ぶ価値アリ。


住所:福島県福島市太田町8-1

TEL:024-534-0818

営業時間:11:00~14:20(LO)、17:30~20:55

定休:水曜

交通:JR福島駅から徒歩約3分


山内直人/’94年生まれ。「ラーメン高校生」として10代のころから活躍してきたラーメン評論家。地方にも頻繁に足を運び、

’15年に食したラーメンは1086杯! 近著に『全国やみつきラーメンBEST100』(マガジンハウス)など


新規で会員登録をご希望の方
既に会員登録がお済みの方
あなたにオススメ

宇野昌磨 銀メダルへの軌跡

好評発売中
宇野昌磨 銀メダルへの軌跡