「自分は冷静。病気ではない」 菊池桃子ストーカー事件・飯塚被告の無自覚が招いた二度目の逮捕

 今年の3月に女優の菊池桃子さんへのストーカー行為で逮捕された元タクシー運転手飯塚博光被告が、そのわずか3ヵ月後に菊池さんへのつきまとい行為を繰り返し、再逮捕された。驚くべき「無自覚さ」を見せる被告の姿を、初公判を傍聴したライターの高橋ユキさんがレポートする。

菊池桃子のストーカーになったタクシードライバーの「経歴書」

4月5日、警視庁の特殊詐欺被害防止キャンペーンに出席した菊池。事件について聞かれると「正直言って『怖い』の一言です」と語った


 女優で大学教員の菊池桃子さん(50)につきまとい行為をしたとして、ストーカー規制法違反に問われた元タクシー運転手・飯塚博光被告(57)の初公判が9月10日、東京地裁で開かれた。


 起訴状によれば飯塚被告は、今年4月17日に警視庁池袋署署長から、菊池さんに対するつきまとい禁止令を受けたにもかかわらず、6月19日の午後4時と、同月23日の午後5時に、菊池さん宅のインターフォンを鳴らし、つきまとい行為を繰り返したという。


右袖がピンク色、左袖が青色のポロシャツを着た、白髪混じりの飯塚被告は、細谷泰暢裁判官に「起訴状で違っているところはないですか」と問われ「ありません」と、くぐもった低い声で答えた。


 飯塚被告は6月の逮捕の前にも、菊池桃子さんへのつきまとい行為で現行犯逮捕されている。


  今年3月31日の夕方、同じように菊池さんの自宅に押しかけたというストーカー規制法違反容疑だった。このとき大きく報じられ、菊池さんもブログを更新。これまでの経緯を明かしていた。ブログによると、昨年秋に配車システムで飯塚被告が運転するタクシーを利用した際、菊池さんであることを飯塚被告に気づかれてしまい、そこから飯塚被告は事務所宛に交際を求めるメールを送ったり、菊池さんの自宅に押しかけるなどのストーカー行為をエスカレートさせていったのだという。Facebookでは飯塚被告とおぼしきアカウントの男性が「菊池桃子さんを応援するfunページ」に 「好きなんです。」とコメントしていた。都内に生まれ、明治大学商学部を卒業後、日本交通に入社。長らくタクシー運転手として働いていたが、逮捕直前に依願退職。ストーカー行為をエスカレートさせていた。時期は不明だが離婚歴があり、事件当時は一人暮らしをしていた。


 3月に逮捕されたのち、飯塚被告は池袋署からつきまとい禁止令と罰金30万円の略式命令を受ける。このとき 「今後はもうやりません」と述べていたにも関わらず、その後二度も自宅に押しかけたというのである。


「4月17日、担当の検事から釈放されたと聞き、一時避難をしました。6月23日、自宅に帰った時にインターフォンを録画機能で確認すると被告の姿が映っていました。許すことはできないので再発しないよう厳しい処罰を望んでいます」  


 菊池さんは公判に証拠採用された調書に、こう語っている。


 3月の逮捕時、菊池さんが更新したブログには 「家族全員 恐怖で眠れない日が続き、不安な毎日を抱えてきた数ヵ月でした」と綴っていたが、不安な毎日はそのあとも続いていたのだ。


 つきまとい禁止令や罰金の略式命令を受けたにもかかわらず、なおも、菊池さんへのストーカー行為を繰り返した飯塚被告。被告人質問では、相変わらずくぐもった声でモゴモゴと「謝りに行けば許してもらえると思った……」 と、再度自宅へ押しかけた理由を語った。あまりにも飯塚被告がモゴモゴと聞き取りづらい声のため、たびたび 「もうちょっと大きな声で喋ってください」と検察官や裁判官から注意を受けていた。事務官がマイクを口元に近づける。だが、モゴモゴした調子に変化はない。終盤には裁判官から 「もうちょっと大きな声出せないかなー!!」と厳しく注意を受ける始末だった。モゴモゴと、やりとりは続く。


検察官「被害者がどんな気持ちになるか、全く想像しなかったんですか?」

被告「想像しなかったです」 

検察官「どうして当時、そうだったんですか?」

被告「相手方のことが好きだったからです」

検察官「好きなら考えるでしょ!」

被告「甘かったです……」


 今回の件を受け、再犯をしないよう「治療のために家族に病院を探してもらって」 おり、また社会復帰後は「病院に通う」 ことと「相手方の遠くに移住する」 と語っていた飯塚被告だが、これらに対する真剣度はいささか怪しかった。


検察官「病院で何の治療しようと思ってるんですか?」

被告「その辺、私もわからないので……」

検察官「でも何か自分のどこか、悪いところがあって治療したいからそう言ったんじゃないですか?」

被告「わたし、自分では冷静なほうだと思ってますので、病気でないと思ってますが……」

裁判官「何科に行くの?」

被告「親族にすすめられたところを探したい……」

裁判官「どんな科があって、どんな病院でどんな治療をする、みたいな話はしてないの?」

被告「そこまではしてないです」

裁判官「だいぶ時間があったのに、全然してないんですか?」

被告「すいません……」


 また移住に関しても「車で1~2時間のところ」 という曖昧な返答。移住地を決めなければ病院も決められないのでは、という裁判官の追求にも「治療が終わってから引っ越そうと思ってます」などと答えていた。飯塚被告、実は3月の逮捕ののちに、心療内科に一度だけ通っている。だが「血液検査して、治療を始めます」 と言われたために、通院することをやめたのだという。その理由を「身体的にはおかしいとこ、ないと思いますから」 と相変わらずモゴモゴと、述べていた。本人だけが事の重大さを認識していないかの様子である。


 この日に公判は結審し、飯塚被告には懲役1年が求刑された。判決は9月26日に言い渡される。



菊池桃子のストーカーになったタクシードライバーの「経歴書」

Facebookに投稿された、飯塚博光容疑者の写真。休日は釣りやゴルフなど、アウトドアな趣味を楽しんでいたようだ

菊池桃子のストーカーになったタクシードライバーの「経歴書」

昨年11月、容疑者はFacebook上の「菊池桃子さんを勝手に応援するfunページ」に「いいね!」を押し、コメントを残していた


PHOTO:時事通信(1枚目) 他はすべて飯塚容疑者のFacebookより



文/高橋ユキ

傍聴人。フリーライター。『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。



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