セルフがすすむコンビニ 熾烈な「実証実験争い」と未来像

セブン-イレブン、ローソン、ファミマほか、最後に生き残るのはどこか


セルフがすすむコンビニ 熾烈な「実証実験争い」と未来像

コンビニは競争が激しく、ライバルチェーンが向かい合って営業するケースもよく見られる(写真上)。ファミリーマートはフィットネスジムを併設した店舗を昨年から展開。米国では無人決済を導入した「Amazon Go」が拡大中だ(写真右)


 東京・麹町には、「未来のコンビニ」がある。昨年末、セブン-イレブンは麹町駅前店を「省人化」の実験店舗としてリニューアル。5台のセルフレジやセルフ式の揚げ物ケースなどを導入した。


 本誌記者も実際に同店を訪れた。お茶とサンドイッチを持って自分でバーコードを読み取り、クレジットカードを差し込むと決済は終了。セルフレジの下に吊るされたレジ袋に詰めると、店員と言葉を交わすことなく買い物が終わった。


 たばこは対面販売が義務付けられているため、店員のいるレジで購入するが、たばこ専用のタブレットがあり、自分で銘柄を選ぶ。たしかに膨大な種類から不慣れな店員に探してもらうのは手間だったため、これは画期的だ。銘柄を選び、年齢確認のボタンを押すと、店員の後ろで指定したたばこが入っている白い棚のランプが光る。店員がそこからたばこを取り出し、確認したうえで購入する。


 コンビニが急速にその姿を変えようとしている。背景にあるのは、深刻な人手不足だ。流通ジャーナリストの森山真二氏が解説する。


「コンビニは商品の販売だけでなく、おでんやコーヒーといった飲食物の提供や公共料金の支払い、チケットの発券、多機能化するコピー機、最近はメルカリなどの荷物の発送や受け取りも加わり、どんどんサービスを拡充してきました。

 それに伴って店員の仕事も多岐にわたり、しかも何か問題を起こせばSNSで一気に拡散するおそれもある。その割に時給が高いわけでもありません。日本人にとって、コンビニ店員は割に合わないバイトになってしまい、人が集まらなくなってきました。そこで、コンビニ各社は、省人化・無人化、もしくは時短営業に舵を切るよう迫られています」


無人店舗の実証実験


 これまで人手不足には外国人留学生などを雇うことで対応してきたが、それも限界。各社は新しい仕組みを導入することで解決を図ろうとしている。近著に『コンビニが日本から消えたなら』がある流通アナリストの渡辺広明氏が話す。


「数字で言うと、有人レジでの現金払いには平均36.4秒かかり、セルフレジでキャッシュレス決済なら20秒前後で済む。レジ周りの省人化を各社が競っていて、その中でローソンの取り組みは進んでいます。同社は、昨年2月にレジの刷新を全店で完了させました。大きなタブレット端末の画面が客のほうに向いていて、お客さんが自分でバーコードを読み取るセルフレジに切り替えられる。

 さらに自分のスマホでバーコードを撮影してネット決済する『ローソンスマホレジ』も導入していて、忙しいビジネスマンに好評です。人手不足はさらに深刻化していきますから、コンビニ業界では省人化を進めて、『ワンオペ』を可能にしたところが生き残るでしょう」


 ローソンは、横浜市磯子区の店舗で深夜0時から朝5時までの無人営業の実験を昨年12月まで実施。得られたデータを元に、無人店舗の研究が急ピッチで進められている。


 ファミリーマートも足立区で無人店舗の実証実験を開始しているが、人手不足への対応として「時短営業」のほうに積極的だと、前出の森山氏は分析する。


「今年3月から、加盟者が希望する場合は本部と事前協議のうえでの時短営業を原則認めるなど、ファミマは時短を積極的に取り入れようとしています。しかし、これは世論に流されている印象も否めません。加盟店の意を汲んで時短にすると、どの店が24時間営業なのかわからなくなり、チェーンとしての統一感が損なわれ、管理も大変になるのですが、その危機感が感じられません」


時短営業の功罪


 逆にセブン-イレブンは、時短営業に消極的だ。昨年、東大阪のオーナーが無断で時短営業を始めたときも本部は認めず、大きな話題となった。なぜなら――、


「オペレーションが複雑化するからです。これまで全店舗24時間営業が前提で、深夜の配送などをやってきました。同じ地区に3店舗あって、1店舗だけが深夜に店を閉めることになれば、配送ルートを組み直さないといけない。セブン-イレブンは個々の店舗を均質化することで、オペレーションなどの効率性を極限まで高めてきたのに、時短営業を導入すればそれが崩れてしまう」(森山氏)


 さらに時短営業の導入は、コンビニでは当たり前だった定価販売も揺るがす可能性が高い。流通ジャーナリストの石橋忠子氏が言う。


「24時間365日オープンしているわずか40坪程度の店内になんでも揃うということが、コンビニビジネスの革新性でした。しかし人件費の高騰で、このモデルは見直さざるを得ません。営業時間の見直しは、定価販売の見直しにもつながっていくでしょう。

 これまではいつでもお店が開いていて、販売が途切れないことがビジネスの根幹にありました。それが崩れると、たとえばスーパーが閉店間際に弁当の値引きをしているのと同じことを要求される。フードロスが社会問題になっていますから、なおさらです。24時間開いておらず、コンビニエンス(便利)ではないのだから、価格で消費者に還元せよ、と言われたときにどうするのか。コンビニの価値観は、転換期を迎えているのです」


 環境問題への配慮も必要だ。今年7月からコンビニやスーパーでレジ袋の有料化が始まる。すでにミニストップでは一部店舗で無料配布を中止する実験を行っており、1枚3円で販売することで、レジ袋の辞退率が約8割になるなど効果が表れているという。


 省人化や環境対策は、コンビニにとって「受け身」の経営かもしれない。今後さらに重要になるのは魅力的な新商品やサービスを開発する「攻め」の姿勢だ。その一つが、食品に限らないオリジナルグッズの開発だ。経済アナリストの森永卓郎氏も注目している。


「ローソンが対象商品を買った人に、アニメ『鬼滅の刃』のクリアファイルを1月7日午前7時から配布するという企画を行ったところ、10分ですべて店頭から消えるという事件が起こりました。私は10時に行ったのですが、当然1枚も手に入りませんでした。

 私はトミカも集めているのですが、セブン-イレブンはタカラトミーに発注して、セブン-イレブンでしか販売しないモデルを売っています。マニアとしては、知ってしまった以上、買わないわけにはいかないじゃないですか。店頭を頻繁にチェックしないといけませんから、必然的にお店に足を運ぶ機会も増える。こうしたグッズ開発は集客にかなり貢献していると思いますよ」


 ファミリーマートはユニークな店舗設計で攻勢をかける。神奈川県中区にフィットネスジムを併設した『Fit&GO』を昨年2月にオープンした。


「1階がファミマで、2階がフィットネスジムになっています。ともに24時間営業で、生活スタイルを問わず、いつでも運動ができます。1階ではプロテインドリンクも買える。別の店舗ではコインランドリーも併設していて、雨の日の集客に役立っているようです。乾燥機を回している間に、ファミマのイートインスペースでコーヒーが飲める。このようにファミマは、全国一律の店舗設計から、それぞれの独自性を活かす流れとなっています」(前出・渡辺氏)


北海道で愛される「セコマ」


 製パン企業の強みを活かす店作りを行っているのが、デイリーヤマザキだ。山崎製パンが運営し、パンメーカーとしてのプライドをかけ、店内厨房で焼きたてのパンを提供している。コンビニ研究家の田矢信二氏がこう話す。


「独自の店内調理システム『デイリーホット』で作られる焼きたてパンは、71年の歴史を誇る山崎製パンならではの味わいです。なかでもおすすめなのが、『贅沢な小倉あんぱん(ホイップ入り)』。店ごとに異なる焼き印で押されているのもかわいらしく、小倉あんと相性のいいホイップがふんだんに使われていて、幅広い客層にウケる商品です」


 北海道を牙城とする独自のコンビニチェーンもある。それがセイコーマートだ。ここもユニークな品揃えで知られる。


「埼玉県や茨城県にもありますが、実質、北海道にしかないコンビニと考えてください。直営店の割合が多く、垂直統合というコンビニ業界では独自のモデルで、自分たちで農場も手掛けています。自社農場があるので、新鮮な野菜を使った総菜などが販売されていますし、PBの『北海道とよとみしぼり』という牛乳や『北海道とよとみ生乳100%プレーンヨーグルト』が人気です。

 ’18年9月の北海道胆振(いぶり)東部地震では、北海道全域で停電が起こりましたが、セイコーマートは独自の被災マニュアルで電源を確保していたため、停電を免れて営業を続け、店内調理で温かい食事も提供した。『神対応』とネットで称賛され、道民に愛されています」(前出・石橋氏)


 令和の時代になり、今後、コンビニがますます無人化していく流れは止まりそうもない。前出の森永氏はコンビニの未来をこう予測する。


「これから次世代移動通信システム『5G』が普及すれば、スマートフォンを持って店内に入り、欲しい物をエコバッグに入れて出てくるだけで、精算まで終わるようになるでしょう。

 スマホで決済することで購買データがすべて分析されますから、今はネットでは当たり前になっている『リコメンド機能』をコンビニも使えるようになります。スマホにおすすめ商品のメッセージが直接届いて、コンビニがリアルタイムで客を引き寄せる時代になるのです」


 コンビニの未来は、日本社会の未来なのかもしれない。


セルフがすすむコンビニ 熾烈な「実証実験争い」と未来像


セルフがすすむコンビニ 熾烈な「実証実験争い」と未来像


ライバルは「Amazon Go」無人決済コンビニが登場する


 米国ではAmazonが運営するレジなしコンビニ「Amazon Go」が22店舗に拡大し、来年には3000店舗にまで膨れ上がると言われている。商品を袋に入れるだけで、レジを通らなくてもスマホアプリで決済される。


 日本にもこれと同様、無人決済システムを導入したコンビニが生まれる。それが今年3月に高輪ゲートウェイ(GW)駅にオープンする『TOUCH TO GO』(TTG)だ。同社社長の阿久津智紀氏が語る。


「JR東日本の子会社でベンチャー企業に投資するJR東日本スタートアップとサインポストが協業する形で、’17年から研究を始めました。同年11月には大宮駅で1回目の実証実験を行い、’18年10月に2度目の実験を赤羽駅で行った。これらで見つかった問題を修正し、高輪GW駅では『無人レジ』に挑戦していきます」


 カメラがコンビニに入った顧客を追いかけ、手にとった商品をカウント。決済ゾーンに入ったら、代金を確認して、交通系ICカードで決済する。


「まずは高輪GW駅での運営が最優先ですが、成功すれば、この仕組みを他の小売店に納入することを目指しています。というのも、コンビニの24時間営業はこのままでは維持できなくなっていく。24時間すべて人というのも、すべて無人というのも無理があると思います。24時間営業を極力無理のない形で維持できるようにするために、このシステムを成功させたい」


 TTGは、コンビニ業界の革命児となるか。


セルフがすすむコンビニ 熾烈な「実証実験争い」と未来像

TTGが’18年10月に東京・赤羽駅で行った実証実験の模様(同社提供)。今春の開業に向け、仕上げ作業が進む


PHOTO:結束武郎 Newscom/アフロ


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