家畜730頭に、フルーツまで 農家を狙う連続窃盗事件「本当の目的」

被害頻発中の北関東で徹底追跡

地元では「外国人グループの犯行」と囁かれているが……

家畜730頭に、フルーツまで 農家を狙う連続窃盗事件「本当の目的」

被害に遭った牛舎。すべての牛に個体識別番号が付いているため、一般の業者への流通は不可能だというが……


「被害にあったのは8月中旬です。ウチは生後50日程度の子豚、合計50頭を持っていかれた。豚小屋の出入り口の排水路のところに血飛沫(しぶき)があってさ、おそらくここで殺して車に積んでいったんだろうな。ウチみたいな規模の小さいところは一頭ずつが貴重なのに、50頭も持ってかれたんじゃたまらないよ……」(群馬県前橋市の養豚場経営者)


 北関東で家畜の盗難が頻発している。今年5月から9月8日までの間に盗まれた牛・豚の数は730頭、被害総額は2000万円以上に上る。追い打ちをかけるようにシャインマスカット、ナシ、モモなど果物にも被害が拡大。収束の気配はまったく見えていない。


「群馬を中心に、少なくとも4県で畜産農家16戸が被害に遭っています。警察は大規模窃盗団の犯行と見て、捜査を進めている。しかし、現在までに捕まったのは、便乗犯と思われる高齢者が一人だけです」(全国紙社会部記者)


 窃盗団の正体について、現地で囁(ささや)かれているのは「外国人グループ」だ。前出の養豚場経営者が語る。


「調べに来た刑事は、ベトナムなどの東南アジアのグループだろうなと言っていたよ。実際、技能実習などで海外からきて働いている人間なら、家畜の扱いには慣れているからね」


 被害が多発している群馬県には約1万人のベトナム人が住んでいるとされる。県の人口に対する在留ベトナム人の割合は日本一だ。仮にベトナム人による犯行だとするならば、目的は何か。群馬県などでベトナム人の留学支援を行う、日本留学試験講師・園部和弘氏が言う。


「目的は自分たちで食べるためだと思います。もともとベトナム人労働者の日本での生活はけっして楽ではありません。彼らのほとんどが日本に来る際、平均100万円程度の借金をしてきます。それでも日本に来るのは、月15万円は稼げるといわれているから。しかし実際の手取りは10万円以下というのはザラ。さらにコロナウイルスによりわずかばかりの収入も失ってしまった。深夜ならば人目にもつかない分、コンビニやスーパーで食べ物を盗むよりリスクが低いと考えているのかもしれません」


 とはいえ、700頭以上も自分たちだけで食べるとは考えにくい。どうやら、盗んだ家畜や果物の転売も行っているようだ。


 実際、事件が起きるようになってから、Facebookのベトナム人コミュニティにて豚や果物の販売を目的とした投稿が急増。たとえば3枚目写真は、8月末に投稿されたものだ。内容は「豚7~9㎏で1万9000円、10~18㎏で2万円。全国発送承ります。個別でご連絡ください」とベトナム語で書いてある。


 さらに、こんな驚くべき犯行目的も考えられるという。『日本が食われる いま、日本と中国の「食」で起こっていること』の著者で畜産物の遺伝子に詳しいジャーナリストの松岡久蔵氏が語る。


「日本の家畜は品種改良が進んでおり、味もおいしく免疫力も高い。今回の犯行は、その遺伝子を狙った可能性もあります。実際に、過去には和牛の精子や卵子を液体窒素で凍らせて密輸しようとして、捕まった事案もある。あくまでも可能性の話ですが、まったくあり得ない話ではありません」


 仮に複数のグループが存在し、連携を取りながら窃盗に及んでいるとしたら、犯人の特定は容易ではない。北関東の畜産家やフルーツ農家は、まだまだ眠れない日が続きそうだ。


家畜700頭に、フルーツまで 農家を狙う連続窃盗事件「本当の目的」

子牛を盗む男たち。他にもドライバーと見張り役が映っており、複数人による計画的な犯行であることが窺える


家畜700頭に、フルーツまで 農家を狙う連続窃盗事件「本当の目的」

Facebookのベトナム人コミュニティに流された豚の販売についての投稿。他にも果物の購入を募る投稿なども見られた


PHOTO:結束武郎


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