「ダイエット注射」に死のリスク! 日本医師会や製薬メーカーが警鐘

オンライン診療➡自宅に配達と気軽に利用できて大ブーム

「GLP-1ダイエット」「メディカルダイエット」

「ダイエット注射」に死のリスク! 日本医師会や製薬メーカーが警鐘

血糖値を管理するため、糖尿病患者の自己注射は薬の種類や時間帯、回数などが個人ごとに設定されている


 食事制限なし、厳しい筋トレも必要なし、おまけにリバウンドもなし!


 所要時間はわずか1分。自宅でひとりでできて、格安なのに確実な減量をコミットしてくれる――そんな夢のようなダイエットが大ブームとなっている。


GLP-1ダイエット」あるいは「ダイエット注射」などと呼ばれる注射による痩身術で、ネット検索すると100を超える美容クリニックの広告ページがヒット。若い女性やユーチューバーらによる体験談や礼賛の声も多数出てくる。


 施術のプロセスは、どこのクリニックもほぼ同じ。医師の診療を受けて、「GLP-1」という〝痩(や)せホルモン〟を注射する。オンラインで診療を受け、自宅に配達してもらって自分で打つこともできる。


 この注射を打つとインスリンが分泌され、血糖値が下がり、食欲が減退する。毎日1回注射することで、ストレスなく長期にわたって食欲を抑えられ、体重が落ちるというメカニズムだ。


GLP-1」は欧米では肥満治療の薬として認可されているため、「メディカルダイエット」とも呼ばれ、医学的に安全なイメージがあるが――実はこの「GLP-1」注射、日本では〝未認可〟なのだ。


GLP-1受容体作動薬は数種類ありますが、ダイエット注射として広く使用されているのは効き目が長く、低血糖になりにくいとされる『ビクトーザ』です。ただし、『ビクトーザ』は2型糖尿病の治療薬としてしか認可されていません。ダイエット薬としての使用は適用外なのです。それでもこの1年でかなり普及しました。とくにここ数ヵ月、急速に認知されたという印象ですね」(『アマソラクリニック』の細井龍院長)


 いかに『ビクトーザ』が低血糖になりにくい薬剤とはいえ、血糖値を下げる糖尿病治療薬である以上、低血糖のリスクからは逃れられない。低血糖の怖さは、自分が低血糖に陥っても「危険な状態」だと気付きにくいことにある。


 軽度でも立ちくらみ、思考低下などが発症。車の運転中に軽度の低血糖になれば、それだけで命は危険にさらされる。重度になると錯乱、けいれん発作、昏睡――そのまま症状が進めば死に至る。実際、糖尿病の治療中に死亡した患者例も報告されている。


「糖尿病患者に使用する際でも、十分な指導と血液検査などの管理が必要です。美容クリニックが患者にきめ細かい血糖値の管理とサポートをしているか、甚(はなは)だ疑わしいですね」(前出・細井院長)


 都内の美容クリニックに勤める医師が匿名を条件に打ち明ける。


「ダイエット注射を導入することになって、まずは自分を実験台にして『ビクトーザ』を試してみたんです。『FreeStyleリブレ』というスキャンで血糖変動を測定する装置を用いて、モニタリングしながら打ちました。体重は開始1週間で約3㎏落ちたのですが、度々、低血糖のアラートが出た。就寝中に死んでしまうんじゃないかとヒヤヒヤしました。自宅で『ビクトーザ』を打っている人たちが血糖値をモニタリングできるとは思えない。もし過量に注射していたらと思うとゾッとします……」


 他の測定器に比べて『FreeStyleリブレ』は値が低く出る傾向があるといわれており、『ビクトーザ』の効き目には個人差もある。だが、それを差し引いても、医療の素人が自分で『ビクトーザ』を打つことのリスクは大きい。


 日本医師会も事態を看過できず、今夏の定例記者会見で今村聡副会長が「GLP-1ダイエット」を名指しで批判。ダイエット薬として適用外使用されていることについて「医の倫理に反する」「禁止すべき」と断罪している。今村副会長は低血糖のほか、膵炎(すいえん)や腸閉塞などの副作用があることにも触れ、卸売業者や製薬会社の対応にも「課題がある」と言及。厚生労働省などの関係省庁には、ネットで展開されている誇大広告を取り締まるよう申し入れる、と述べた。


 日本医師会が警告を発した後、『ビクトーザ』を製造・販売する『ノボ ノルディスク ファーマ』社は自社のHPに「GLP-1受容体作動薬の適正使用に関するお知らせ」という文章をアップ。


 2型糖尿病以外に使用した場合、「思わぬ健康被害が発現する可能性も想定されます」と警告した。


 本誌は同社広報部に「『ビクトーザ』をダイエット注射として使っている美容クリニック等への販売規制はしないのか?」とも質(ただ)したが、「お答えできません」と回答するのみだった。


 何の努力もせず痩せられる――そんなウマい話は存在しない。それどころか、自らの命まで危険にさらすことになる。


「ダイエット注射」に死のリスク! 日本医師会や製薬メーカーが警鐘

「ダイエット注射」は若者の間に浸透。動画投稿サイトには体験レポートが何本もアップされている

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取材・文:吉澤恵理(薬剤師・医療ジャーナリスト) 


PHOTO:︎アフロ


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