あらためて振り返る 日本代表に「神風」を吹かせたのは誰か


日本代表に「神風」を吹かせたのは誰か

「神風が吹いた」


 ロシアW杯での日本の躍進は、その一言で説明できるのかもしれない。緒戦のコロンビア戦、前半3分で相手はハンドでPKを献上し、一人退場。日本は試合のほとんどを数的優位で戦い、白星発進することができた。その勢いを駆って、セネガル戦は好ゲームを繰り広げ、勝ち点1を積み上げている。先発メンバーを戻して挑んだベルギー戦は、撃ち合った末に2―3と敗れたものの、感動的な戦いぶりだった。


 神風という外的要素が、日本に力を与えた。それは間違いない。ただし、W杯は運だけで勝ち上がれる大会ではないのだ。


「受け身ではなく、自分たちのアクションで、チャレンジして戦えたと思います」


 ベルギー戦後、長谷部誠はそう言って少し胸を張った。


 神風は吹いたのではなく、吹かせたのである。


 コロンビア戦の立ち上がり、日本は臆することなく前へ向かっている。香川真司はボールを戻さず、バックラインの裏へ出した。そのパスに大迫勇也が猛然と走りこみ、ダビンソン・サンチェスと入れ替わり、走り勝った。ダビンソン・サンチェスは強豪トッテナムのレギュラーだが22歳と若く、日本を見くびっていたのだろう。大迫のシュートは外れたが、香川はコロンビアの選手よりも早く詰めていた。そのシュートが、相手のハンドを誘っている。


 すなわち、攻撃姿勢で自らつかんだ流れだった。2度追いついて引き分けたセネガル戦も、2点リードから逆転されたラウンド16のベルギー戦も、それは共通している。重圧のかかるPKを、自ら志願し、長い抗議の後で確実に決めた香川は攻める日本の象徴だった。





 一方で特筆すべきは、果敢な攻撃を促した守備が改善されていた点だろう。


 大迫の巧妙なハイプレスや体を自在に使うポストワークは、相手の流れを切り、日本に流れを与えていた。乾貴士は攻撃面ばかりが強調されるが、守備でも相手のコースを切り、侵入を許さず、抜け目のないポジショニングが光った。柴崎岳もディフェンス面で強度の弱さを見せたが(セネガル戦の2失点目など)、集中力は高くカバーリングは適切で、何より高い技術で「ボールを渡さなければ攻めさせない」という守備に変えていた。


 攻守の両輪が噛み合った中でMVPと言えるのは、やはり長谷部誠だろう。バックラインと前線のつなぎ役として、ラインをコンパクトに保ち、守備を安定させている。常に味方選手と適切な角度、距離感を保ち、守備のポジションを重視する一方、攻撃の球出しも迅速で、欠かせない選手だった。ポーランド戦では不在の在を強く感じさせ、終盤、ピッチに入っただけで敵の猛攻を落ち着かせている。1点でも失えば、グループリーグ突破はない状況だった。


 西野朗監督は、今回のチームをたった2ヵ月で準備している。リーダーとしての決断力は、真似できないものだろう。厳しい批判に晒されたが、ポーランド戦では「負けても勝ち上がる」という博打にも勝った。


 ただ、最大の功労者はピッチに立った選手たちだろう。言われなき非難を称賛に変える反発力を見せた。追い込まれたとき、本来の実力を見せている。


 皮肉なことに、彼らはハリルホジッチが主張した「縦に速いサッカー」をロシアで運用し、勝利を収めたとも言える。プレッシングとリトリートの使い分けや体を張った「デュエル」。それらは、ハリルホジッチが要求し続けたことだった。


 言い換えれば、選手が戦術をアップデートさせた。フランスの名門マルセイユで活躍する酒井宏樹などは、著しい進化を遂げている。多くの敵の左サイドはマネ、カラスコ、アザールなど強力だったが、互角以上の戦いを演じた。局面の勝利が、全体のアドバンテージになっていた。


 最後は選手たちの自主性が、このドラマを作り上げたと言えるだろう。試合のマネジメントに波はあったものの、西野監督の好む言い方を拝借するなら、「素晴らしいキャスティング」だった。


「ベルギー戦では力の差は感じる部分もありました。例えば、どうしようもない高さだったり。ただ今回、日本の進むべき道は示せたと思う。さらに積み上げ、もう一つ上に行きたい。4年後、というのは長いですけど、もう一回チャレンジしたい」


 右サイドで存在感を見せた原口は、ベルギー戦後のミックスゾーンでそう激闘を振り返っている。その覇気が、神風を吹かせたのだ。


(スポーツライター 小宮良之)


PHOTO:JMPA


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