伊調馨「至学館軍団」を破る!「戦う前に勝負はついていた」

パワハラ騒動、2年のブランクを乗り越え全日本選手権で因縁の相手に勝利


伊藤馨「至学館軍団」を破る!「戦う前に勝負は着いていた」

練習拠点の日体大へ向かう伊調。「猛練習により、日に日に筋肉が増大していった」(日体大関係者)という


「マットから離れて2年近く経っていながら、あそこまで戻すとは……。あっぱれ、としか言えません」


 そう語るのは、至学館大学の谷岡郁子(くにこ)学長(64)だ。パワハラ騒動を巡って争った"因縁の相手"を脱帽させるほど、伊調馨(34)は強かった。


 12月23日のレスリング全日本選手権。57㎏級に出場し、決勝に勝ち進んだ伊調の相手は、リオ五輪金メダリストの川井梨紗子(24)だった。彼女は至学館高校から大学に進み、卒業後も同大を練習拠点としている「最強軍団」の一人である。


 苦戦を強いられた伊調だったが、ラスト10秒でタックルからテイクダウンを取り、逆転勝利。絶対女王が帰ってきたことを知らしめる復活優勝となった。前出・谷岡学長が語る。


「正直、戦う前に勝負はついていたかもしれません。梨紗子の頭には、馨の強いイメージが染み付いていた。最後まで積極的に前に出られず、結果、逆転勝ちを許した。攻めて攻めて攻めまくる気持ちがなければ、馨には勝てません」


 ’16年のリオ五輪後、伊調は「休養」を理由にレスリングから離れた。所属先のアルソックでOLも経験し、満員電車に揺られる生活のなかで、体重は5㎏近く落ちた。だが、その間も片時もレスリングを忘れたことはなく、着々と復帰への準備を進めていたという。


「世界選手権やヨーロッパ選手権など、海外の大会のビデオを観て、試合展開や技を研究していたそうです。しかも観るのは、男子の試合。テクニックもさることながら、伊調の強さを支えているのは、貪欲なまでに『レスリング道』を追究するその姿勢にあります」(レスリングに詳しいライターの松原孝臣氏)


 とはいえ、復活までのプロセスがすべて順調だったわけではない。’18年春頃に日体大で練習を再開した伊調だが、「日本一」と言われる至学館大に比べ、練習環境は劣る。


「特に困ったのは、練習相手がいないことです。オリンピックメダリストがゴロゴロおり、彼女たちが互いに切磋琢磨することで強くなるのが、至学館大の特徴。一方の日体大には、伊調の相手が勤まる選手はほぼいない。そのため、試合勘を取り戻すのには相当苦労しました」(日体大関係者)


 その逆境をカバーするため、伊調は自らに猛練習を課したという。ほぼ毎日、自宅と大学を自転車で往復する日々(上写真)。遊びにも出かけず、食事も自炊するなど(3枚目写真)、ストイックな生活を送ってかつての肉体を取り戻した。谷岡学長が言う。


「私が見てきた選手のなかで、最高のレスラーは吉田沙保里。そして最強は、伊調馨です。沙保里は誰よりもレスリングが上手く、馨は誰よりも強い。
 いま、沙保里は至学館で選手の面倒を見てくれています。今後、沙保里の育てた選手たちと馨がどう戦うのか。今回は負けましたが、次回はきっと違う展開になるはずです」


 2020年東京五輪の出場権は、’19年の全日本選抜、そして世界選手権を経て決まる。絶対女王と最強軍団、オリンピックのキップを掴むのはどっちだ。


伊藤馨「至学館軍団」を破る!「戦う前に勝負は着いていた」

’18年春頃の練習再開後、髪を15㎝ほどカット。理由は「髪を結んでいる時間すら惜しいから」なのだとか


伊藤馨「至学館軍団」を破る!「戦う前に勝負は着いていた」

スーパーで買い物をする伊調。体調管理のためか、スーパーで自ら食材を選び、自炊をしているようだ


伊藤馨「至学館軍団」を破る!「戦う前に勝負は着いていた」

本誌未掲載カット

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PHOTO:等々力純生(1枚目写真) YUTAKA/アフロスポーツ 西 圭介(買い物)


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